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夢見るそれいゆ 99

「ちなっちゃんは、國吉先輩が私のことを好きだって気づいていたんだと思う。
あまりにも私が先輩に関心を持たなかったから、頭にきたんだよ。」
ちなっちゃん本人から直接聞いてはいない。
でも好きな人をずっと見ていたら、きっと気づいてしまう。

「それでも、ひなたを傷つけていい訳ではないわよ。人間のこころは、押し付けられるものではないもの。」
クレハは自分のことのように、私を心配してくれている。

「クレハは、優しいね。」
「私が…優しい?」
「うん、いつも気持ちに寄り添ってくれる。」
「はじめて言われた。言葉遣いがきついとかは、しょっちゅう言われるけど。」

下の方で、ニャーと猫の姿の精霊・朔の鳴き声が聞こえた。

「『そろそろ参拝しないと、國吉こっち来ちゃうよ。』ですって。」
クレハが朔の言葉を訳してくれた。

「クレハ、朔、参拝してくる。またね!」
私はいそいそと、紫陽花の森を後にした。

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