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涙鉛筆【毎週ショートショートnote】

僕は若い頃文具店で1ダースの鉛筆を買った。
絵を描くためだった。

「何で鉛筆なの?シャーペンじゃ駄目なの?
線が太るじゃん!」
知人にツッコまれたが、僕は反論した。

「分かってないな〜。鉛筆はいろんなことが出来るんだよ。普通に線も描けるし、寝せて描けば広い面を塗れる。芯を削った粉を使って…」
熱く鉛筆について語る僕に、知人は「分かった、もういいから!」と言った。

知人とは、あの会話の数カ月後にケンカ別れした。
原因は覚えていない。

いつの間にか絵を描くのも辞めてしまい、鉛筆は半ダースほど箱に残して、机の奥にしまわれていた。

時が経ち、いらないものを整理をしていたら机の中から鉛筆が出てきた。

「久しぶりに絵を描いてみようか。」
僕は画用紙を買ってきて、絵を描きだした。

はじめはブランクのせいで思うような線が引けなかったが、最後の1本になった頃には勘を取り戻していった。

鉛筆で描いた、かつての知人の笑顔に僕は涙した。

涙と鉛筆、分けて書きました。

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