見出し画像

夢見るそれいゆ 56

「心配も何も、俺は夏越を信じてたからさ。
実際、落ち着きを取り戻してからは、ひなの看病きちっとやってくれたし。」
「うん、私が意識を取り戻した時には、いつもの夏越クンだった。」
パパは娘を任せても大丈夫な位、夏越クンを信頼しているんだ。

「…パパ、生まれ変わりとかって信じる方?」
「何だ?急に。」
私はハッと我にかえった。もし信じないと言われてしまったら、どうするつもりなんだ私。
「あ、気にしないで。何でもない。」
でもパパは、ガタイの良い見た目によらず一回言った言葉も丁寧に拾い上げる性格なのだ。

「…そうだなー。俺は魂は巡るって信じたいな。
でも、俺はあおいやひな、夏越がいるこの人生を精一杯全うする。だって生まれ変わっても、またお前らと出会えるか分からないじゃないか。」
良かった、パパに夏越クンの15年を全否定されなくて。
「私、パパが私のパパで良かったと思うよ。」

家族で昼食を食べ、そろそろ夏越クンが八幡宮からウチに着く頃、家の電話が鳴った。
ママが電話に出ると、ママの異母妹からだった。
「近くのバス停で降りたけど、迷子になってしまったみたい。私、迎えに行ってくるわ。」
ママは、急いで迷子の異母妹を探しに家を出た。

読んで下さり、ありがとうございます。いただいたサポートは、絵を描く画材に使わせていただきます。