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紫陽花の季節、君はいない 74

夜になり、柊司が自宅に帰ってきたので、俺はスマホの件について問い質した。
すると、柊司は新品のスマホをウエストバッグから取り出した。

「夏越に言われたから、朝一でスマホショップには寄ったんだよ。
そしたらショップ店員に『保証期間が終了しておりますので、修理ではなく新機種にしては如何でしょうか。』って言われてさ。
どうせなら子どもも生まれるし、良い機種にしたくてさ。
仕事帰りにゆっくり選ぼうと思ったんだよ。」
と、怒られるのは心外だと口を尖らせて答えた。

緊急時に連絡がつかなかったのは腹がたったが、柊司の気持ちも分からなくはない。
俺はモヤモヤした気持ちを深呼吸して切り替えた。

「柊司、頭ごなしに怒って悪かった。」
俺は物事には色んな面があることを覚えておこうと思った。

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