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紫陽花の季節、君はいない 41

俺が不覚だった。
あじさいまもりを持ったまま眠ったせいで、起き上がる時に、涼見姐さんがリメイクしたかんざし部分を折ってしまった。

紫陽の大事なものというのもあるが、かんざし部分は姐さんの小枝で出来ている。
紫陽の悲しむ顔と姐さんの激怒する顔が、同時に浮かんだ。

俺が凹んでいると、
「な~ごし、ぅはよ!」
「うわ~!!」
柊司が寝室に急に現れたので、朝から叫び声をあげてしまった。

「夏越、鍵開いていたぞ。無用心だな。
それにしても、玄関に置いてある木の枝、丈夫そうだな。護身用か?」
柊司は姐さんの枝がある玄関の方を指差した。
「ああ、知人にもらったんだ。」
さすがに精霊からもらったとは言えない。

「そうか。夏越も俺達以外に心配してくれる知り合いがいたのか。良かった、良かった。」
柊司が寝癖のついた俺の頭をくしゃっと撫でた。

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