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【ショートショート】父は知らない

コラボ小説「ただよふ」主人公の息子、航平くんの幼少期のお話です。


僕が幼い頃。

父は東京で働き、母はうつ症状(まだこの頃は、双極性障害と診断されていなかった)で苦しんでいて、大阪の実家に僕と共に身を寄せていた。

僕は「なんでお父さんは、いっしょにいられないの?」と母に聞いたことがあった。

「お父さんは、私たちを守る為に頑張って働いているの。だから、航平は自分のことは自分で出来るようになろうね。」
そう答えた母は、どこか淋しそうだった。
父に負担をかけている負い目が、母にはあった。

「お父さんがいないときは、ぼくがお母さんをまもるからね。」
僕がそう言うと、母は強く僕を抱きしめ、大粒の涙を流した。

「ありがとう。ごめん、ありがとう。」

この時のことは、父には言えずにいる。

【完】


海宝課長の家庭事情、may_citrusさん原作7話を読んでいただくと、より理解できます。


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