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夢見るそれいゆ 38

「私…紫陽が羨ましい。
夏越クンやクレハにこんなに愛されていて。」
私は思っていたことを無意識に呟いていた。
クレハや御葉様が私を見ている表情で、私は声に出していたことに気付いた。
私は戸惑いを隠せなかった。

「ご…ごめんなさい。
私は邪気を祓ってもらっても、こんなに『黒い気持ち』が存在している。
何てイヤな人間なんだろう。」
私は爪が食い込む程、自分の手を握り締めた。

すると、クレハは私の手をとって言った。
「良いのよ。ひなたが恥ずかしいと思っている『黒い気持ち』も私は好きだわ。
だって、ひなたに大切に思われている証だもの。」
「こんな私でも…良いの?」
私は恐る恐る聞き返した。
「良いに決まってるじゃない!」
クレハがニイッと笑った。

「まぁ、紅葉も夏越殿に対しては辛辣でしたしね。」
御葉様がイタズラっぽく微笑んだ。
「それは言っちゃダメなヤツです~。
もう、御葉様のイジワル!!」
クレハの頬が膨らんだ。
思わず、私は声を出して笑ってしまった。

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