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紫陽花の季節、君はいない 31

「──夏越、お前…目の前の人間をきちんと見ていないのではないか?」
思いがけない姐さんの指摘に、俺は顔をしかめた。

「何で見てもいないのに、そんなこと言えるんだ!」
急に大声を出したので、頭がくらくらする。
「分かるさ。お前が先程から言っていることは、お前の妄言だからだ。
お前の母親が儚くなったのも、紫陽が転生を選んだのもお前に責は無い。
夢に見たのは、お前が抱いている『罪悪感』だ!
お前は不安から、目の前にいる人間を遠ざけようとしているのだ。」
姐さんに悉く図星を突かれた俺は、何も言えなかった。

「お前は社会に必要とされていないんじゃない。お前が『社会』と称して、一緒くたに目の前の人間を拒絶しているんだよ。」

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