紫陽花の季節、君はいない 83
数日後、柊司がひなたを抱いて俺の部屋にやって来た。
「ひな。ここが俺の親友・夏越の部屋だ。」
赤ちゃんに説明してもわからないと思うのだけど、柊司は大真面目にルームツアーをした。
柊司が俺のデスクに置いてあるテキストに目をやった。
「『アロマテラピー検定』に『薬膳・漢方検定』、『ハーブ検定』?夏越、受けるのか?」
「まだどこに配属されるかは決まっていないけど、知識を付けたくてさ。」
俺の就職先は植物公園である。
植物について、知っていて損はないと思う。
「あんなに不健康な生活をしていたお前がな~、こういうのに興味持つ日がくるとはなあ。」
柊司が感慨深そうにしている。
「言っておくけど、もう栄養失調では倒れないからな!」
「おう、そうしてくれ!」
柊司がニカッと笑った。
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