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よしおかさくら
2019年3月7日 10:20
「もしもし?」 「もしもし。俺、靖だけど」 「どうしたの? 急に」 「どうって……。おめでとうって言おうと思ってさ」 「……覚えてたんだ、私の誕生日」 「まぁね」 「それで?」 「それでって?」 「そう、用が無いなら、切るわよ」 「そこに誰か、居るのか」 「どうして?」 「だって、じゃあ、何でそんなに慌ててるんだよ。久しぶりなんだから、もう少し、」 「私は話すことなんか、無
2019年3月7日 10:19
なんでなの、と問い詰められても、俺は返事のしようがなかった。 ただ、止めたくなっただけだった。意味なんて無い。 他に誰も居ない放課後の教室で、ただ裕美を見つめていた。その後ろの大きな窓の外に、曇り空が広がっている。彼女が入学してきたころ花の散っていた樹も葉桜となり、今はうすぐらい影を風に揺らしていた。 毎日のように部活に一緒に出ようと誘われ、なんだかんだと理由をつけて断っていたが、もうそ
我慢して半日ほど過ごしたが、もう限界らしい。明日は休日だから、きっと歯医者は休みだ。今行かなければ、しばらくの間はこの痛みが続くだろう。 昨日の夜からの痛みだったので、あらかじめ保険証を会社に持ってきていた。 課長の方を見やると、机の上のノートパソコンに向かっていた。電話は金曜日のせいか少なかったし、二、三十分席を外したところで何か言われるようなことはなさそうだった。 「あの、課長……」
うすぐらいなかにおんなの顔があった。 頬にくすぐったいのは、おんなの髪の毛だった。もういちど、じっくりと見てみる。面長の、おとなしそうな顔立ちだった。ゆびを伸ばすと、裸の体の柔らかさがある。そのままなぞっていく。これは背中だろう。ひんやりとしてなめらかな背中に、円を描くと、髪が左右に揺れ、腹の上の重みが揺れた。おんなは俺の腹の上に乗っているらしい。そう気がついたとき、おんなは俺の耳に唇をよせて、
運転手によく見えるように停留所番号の札を掲げてから、銀の硬貨を穴のある物とない物一枚ずつと、銅の硬貨の穴のない物を一枚と一緒に支払い口に入れてバスを降りる。折りたたみの傘はなかなかうまく開かない。二回ほどお猪口になってからようやくうまく広がった。その間に細い雨が袖や背中に降りかかったが、香夏子はさほど気にしなかった。ひっきりなしに行き交う車のライトは雨にぼやけて糸を引く。目を閉じたり、開いたりする
2019年3月7日 10:18
問題はアパートの隣の住人だった。同じ大学の学生らしいのだが、学年も科も違うらしく、構内では顔を合わせたことがない。越してきたのはこの春で、俺より後だった。ある時、バイトに出かけようとしてドアを開けると、奴は女連れで大家さんに部屋を案内されていた。「……とまぁ、こんなもんさね。できるだけ綺麗に使ってちょうだいよ」 大家さんはたいていの大家が言う言葉を、やけに時間をかけてじっくりと言い、奴と女を改