見出し画像

句集『しなやかな線』

吉田祥子 文學の森 令和五年五月発行 
「未来図」同人 未来図後継誌「磁石」創刊 編集同人
ながさく清江先生 超結社句桜田句会でご一緒の吉田祥子さん第一句集『しなやかな線』を読む。
小学校の教師をしていらっしゃる祥子さん、どのお句も自然体であたたかく魅力ある作品の多い句集です。

指先
くちびるに触るる茶柱春兆す
加賀金すべて撒くごと大花火
春浅し指先白く母の逝く
月光に清められたる蛇口かな
カメラより主役逃げ出す七五三
臍の緒は神採寸冬深む
蟻の列子はひたすらに俳句詠み
天秤の静かに止まる原爆忌
鯨来る海に境はなかりけり
潮目
卒業式つぼみのやうな五年生
膝小僧前へ前へと卒業す
濃あぢさゐ花に潮目のあるやうに
乳母車南瓜をのせて帰りをり
先生の下の名おぼえ朝ざくら
次男坊筍飯を食べに来よ
まんまるの鼻の穴なりプールの子
指先を辞書に滑らす秋はじめ
山眠る海の記憶の石を抱き
水かげろふ胸にうつして鴨眠る
正夢
初化粧大きな笑みを仕上げとす
パレットの色が色生む春隣
背中掻く春には羽がはえるらし
子の声の減りゆく団地小判草
山の吐く硫黄の息や青芒
のの字書き大根おろす良夜かな
福耳の祖母の炊きをる栗御飯
ふくろふの首は正夢見る角度
まづ火箸刺して炉話はじまりぬ
結葉
くうるりとなほる逆子よ春隣
地球儀の銀の緯度尺風光る
朝寝してむんずと鳥をつかむ夢
霾や土偶は太き足をもち
ぬらぬらと鰭の分け入る花筏
変身のポーズで眠るこどもの日
結葉の綾濃く淡く秞子の忌
月光や蓋のずれたるおもちや箱
多面なるピカソの女林檎剥く
月蝕を映す海ばら鯨吠ゆ







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?