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ルックバックの映画を観た感想ー哀しいけど良い映画だった

アイキャッチは原作漫画&映画の入場者特典のOriginal Storyboard(原作全部のラフ画)の写真。

予告編からすごい、藤本タツキの絵が動いてる。しかも色と音付きで。

※ネタバレあり

公開2日目、早朝での視聴

ルックバックの映画を観てきましたー。

原作を読んだ上で、公開から2日目の早朝の視聴。

原作は読んでいたけれど、映像化してどうかなあーまた微妙な感じになったら嫌だなあーーと思っていましたが、今回は良かったです。
(チェンソーマンのアニメ化は正直原作の良さが薄まっていた気がした)


ながやま こはる(原作者の藤本タツキ)ちゃんのXのポストにもあるように、監督、押山清高の熱がすごいらしい。

アニメ化の時の監督も拘りはあったようだったけど裏目に出てしまった気がするから、今回は成功していたようで良かった。

そしてポストにあるように絵が上手い。動きも滑らかで2.5次元のアニメを見ているような感じ。

本当に藤本タツキの絵が動いてるみたい。


ストーリーは原作そのままだし、オリジナル要素も素晴らしい

基本的に変に改変を加えられるようなこともなくストーリーは進んで、原作を尊重したまま終わる。

原作を変に改変されなくて良かった。。。

でももちろんオリジナルのシーンもあって、藤野が京本と別れて1人で漫画を描き始めてから、アシスタントに満足できていないような描写等もある。
京本の後任の背景アシスタントに納得にできず、電話で編集者に連絡するんだけど、俳優さんが声優をやってるせいかすごくリアル笑

「〜失礼します」の社会人経験ある感。

他にも色々あるけど、オリジナル要素が元の話の良い補充になってると思った。

映像でしか味わえない要素もあった

そして映像でしか表現できないようなところも。

・藤野の漫画がアニメーションとして動くシーン
・京本にファンだと言われ、喜びのあまり雨の中踊り走るシーン(個人的名シーン、なんでか雨に唄えばを思い出しました)

なんだかその前の2人が京本の家の前で出逢うシーンを見て、何も感動する場面じゃないのに泣きそうになった。「京本が動いた!走って追ってきた!」それだけなのに。
原作読んだ人と読んでない人ではきっと感じ方も違うんだろうな…。

映画 ルックバック より引用


・ジャンプの新人賞を取った2人が10万をおろして遊びにいくシーン(青春すぎる)
・喜怒哀楽の顔の表情+京本の死後部屋で崩れ落ちるシーン、出ていくシーンの身体の動かし方(ヨロヨロしていてすごく情感があった)

映像ならではだなーこれは、と思いながら観ていました。

少し驚いたのが、京本の訛り

え、京本って訛ってたの??原作読むだけじゃわからなかった。主人公は標準語だから最初聞いた時は驚きました。

私の京本のイメージは、引きこもりで頭もボサボサで野暮ったいけど笑うと可愛くてほわほわしてる声の子だったのですが、ちょっと鈍臭さがプラスされて、リアリティが出た気がしました。

感想

感想①京本が死なない世界線が欲しかった


最後のエンディングの歌は、聖歌隊のようなコーラスが入っていて、そのまま京本への鎮魂歌になっているのかな…と思った。

実際にあった事件を元にしている所があるので、死者が出ないというのは難しいのかもしれない。
でも、藤野と京本が出会わなかった世界線(というか藤野の白昼夢⁇)で、大学で再会した2人がダックを組み、そのまま2人で藤本キョウとして突き進む未来も観たかった…。

こういう気持ちから2次創作が作られるのかな…。

感想②藤野の白昼夢


パラレルワールドの話なのか、藤野の白昼夢、妄想なのかはわからないけど、小学生の頃に出会わなかったとしても、2人はそれぞれの絵の道に進んでいて、例の事件で再会もする。
しかもそこでは京本は死なずにいて、アシスタントとして再び藤野と漫画家をやる可能性もあったのかもしれない。

京本の願いは「藤野に頼らずに生きてみたいしもっと絵が上手くなりたいから、そのために美大に行きたい」であって、漫画の背景を描くのを辞めたいだとか、藤野とやっていけないというような理由ではなかった。その証拠に美大へ進んでからも京本はずっと藤野を応援している(部屋に藤野のサイン入り半纏を飾る、藤野の漫画の同じ巻を何冊も買う、感想ハガキを送っている…)。
だから、本当に美大卒後の京本が改めてアシスタントとして藤野と出会い、2人で漫画家を目指す世界線もあったのかも…と思うとすごく哀しくなった。


2次創作はしたことがないけど、そうしたい人の気持ちが少しわかってしまった。せめてその中だけでも2人が生きて活躍するパラレルワールドを作りたいような気持ち。

感想③ルックバックの意味

「京本も私の背中を見て成長するんだな」という藤野のセリフがあったけれど、それはお互いに言えることですよね。

藤野は、小学校の新聞で京本の絵を見てから京本に追いつこうと努力し、その練習した藤野の漫画を見て「5年6年生には更に面白くなった」と藤野の背中を追う。離れてからも京本はずっと藤野を追い続けてた。

そうやって2人が切磋琢磨して成長してゆく姿がルックバックなんだなあと。

そして「なんの役にも立たないのに、どうして漫画を描くの?」の問いの答え、それはおそらく、自分が認めた実力を持つ京本が自分の漫画を読んでくれて嬉しかったことに関係してる。

藤野は、元々周りから絵が上手い!と言われてすぐその気になるお調子者な性格ではあったようだけど、自分が衝撃を受けるほど絵の上手い京本に、天才だファンだと言われて、ものすごく嬉しかったのだと思う。
(お互いを天才だと思い合っていた)

しかも京本は、道を分つまではずっと藤野の漫画の最初の読者なんですよね。その京本の嬉しそうな顔は作者として嬉しいだろうなあ。

藤本タツキ「ルックバック」より引用

この笑顔ですよ。
作者としては最高に嬉しいんじゃないかと思う。


少し絵を描くのが趣味だったり、作品作りをする人なら誰もが(お世辞だとしても)「上手いねー」と言われた経験は待っていると思う。
主人公の藤野もその1人で、それで絵をアイデンティティとして、その後は天才の京本の絵に衝撃を受けて努力→叶わなくて一度は筆を折ってしまう。

ここもきっと共感できる人は多い。
狭い中で井の中の蛙でいたとしても、その後は大海へ出て一度は心を折られてしまう。
そんな経験は芸術でもスポーツでも勉強でも絶対に一度はあると思う。

そして大海(京本)を知った蛙(藤野)は努力して(地味な所だけどエライ)、叶わないと知って一度辞めてしまう。
ここもわかる人は多そう。

そんな2人が出会ってお互いの背中を追いかけつつ切磋琢磨してデビューを果たす。
最後は別々の道を選び、しかも京本は例の事件の被害者になって亡くなってしまうけれど、藤野は出会ったことを良い意味で消化して、2人で完成させた漫画家、藤野キョウとしてその後も漫画家の道を進んでゆく…。
ルックバックはシンプルにいうとそんな2人の物語だったと思う。

まとめ

京本と藤野が出逢わなかった世界線でも、結局2人は絵を描いていて、なんならもっと良いことに京本は生きている。

なんだよ、出逢わなかった方が良かったじゃん…。

私も最初はそうは考えてしまったけど、小学校で出会った2人が大学で別れるまでの経験はきっと京本にとって掛け替えの無いもので、

京本の「藤野ちゃん、部屋から出してくれてありがとう」というセリフがそれを語っている。

このセリフが後々響いてくる、救いの言葉だなあと思う。

なんだか思うことが多くてまとめきれないけど、2人みたいに就職先があるかもわからない芸術の道へ突き進む人はすごい。
藤野なんかはスポーツもできてコミュ力もあるんだから、きっと他の道もあったはず。

だけどそれでも漫画を描く理由が、この話の中に表現されていると思う。

観るとダメージも受けるので何度も見たくは無いけど、たまに観たくなる名作…ルックバックはそんな映画と原作でした。


おしまい。


おまけ

作者を知る教員のインタビュー。
藤本タツキは変人エピソードが多いけど、ここでは割と普通め。

関連商品


原作。Kindleだとちょっと安い。


↑私は今回紙の本で買いました。


サントラ。曲も良かったな。


mp3ver.最近はCDを買うか迷うよりも先に配信されたりする。


藤野が京本にファンだと言われて雨の中踊り走る名シーンで、これを思い出した。
これも良い映画。ミュージカルが苦手じゃなければ是非。

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