健康診断と西村京太郎
前回は、健康診断で心臓が垂直になったお話をいたしました。
実は私、これより前にも心臓の検査にひっかかったことがありました。
遡ること10年前、中学生のときのことです。
そのときは再検査が必要で、再検査メンバーをバスに積み込んで病院に向かうという遠足がありました。
あらかじめ待ち時間があるため本を持参しておけと言われていたので、私は本を持参しました。
空白の時刻表 西村京太郎
これは西村京太郎の短編集で、おそらくわたしが初めて読んだ西村京太郎作品ではなかろうかと思います。
私はこの一冊を手に病院に向かったのですが、この本は小学生時代に既に何度も読み返したものであり、そのうえ朝読書の時間にだいたいを読み終わってしまったと、そんな状態でした。
当時から読むのが早いわたしは颯爽と読み終わり、空白の時刻表を手に病院の虚を見つめていました。
そんな私に保健室の先生がわたしに声をかけてくれました。
「お前、薬やってんか?」
違いました。
「本もう読んじゃった?」
そういい、中一女子に似つかわない西村京太郎作品を見ました。
「渋いね」
もう小学生時代に喰らい続けたドン引きを難なくかわした私に先生は
「私のと交換する?」
と本の交換を持ちかけてきました。
先生が読んでいたのは東野圭吾。
先生はわたしが父から譲り受けし西村京太郎を持って行き、私は先生の東野圭吾を手にとりました。
それからです、わたしが東野圭吾のファンになったのは。
…そうであればよかったのですが、私は西村京太郎に今も一途なままです。
先生からもらった東野圭吾はなんだかよくわかりませんでした。
最後まで読めなかったし、面白いかどうかの判断をするにも至りませんでした。
でも擦り切るほど読んだ西村京太郎よりは新鮮味があり、そのときはちょっと面白かった。
その先生は一年目に異動になったのでそこからほぼ会うことはありませんでしたが、私が男子中学生なら淡い初恋に発展していたかもしれないくらい素敵な方でした。
そのときは、心臓は垂直になってなかったです。
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