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遊戯療法

 遊戯療法は、おもに子どもを対象として、遊具・玩具を用いて遊びながら行う心理療法である。子どもは十分な言語表現活動を行えないため、遊びにを通じて、その内的な世界が現れるという考えに基づいている。
 遊戯療法には、誰にも介入されずに自由に遊べる空間が必要である。玩具や遊具を備えた遊戯治療室(プレイルーム)などで行われるのが一般的である。週1回およそ40分~50分の時間で実施される。
 心理療法家は、子どもの主体性を尊重して、受容的に接する。そのことが、子どもにとって何をやっても自由であり、しかも心理療法家との関係において守られているという確信を得ることにつながる。この信頼に満ちたあたたかい人間関係によって、子どもはありのままの自分を表現することが可能になり、内的な葛藤を解決し、自己成長を遂げることができるといわれている。
 この遊戯療法において重視されているのが、アメリカの児童心理学者、Axline,V.M.の8つの原則である。①子どもと温かい親密な関係を築くこと。②子どもをそのまま正確に受け入れること。③子どもとの関係におおらかな気持ちを作り出すこと。④子どもの気持ちを的確に認識し、気持ちを反射してあげること。⑤子どもがもっている問題解決能力を信じ、深い敬意を払うこと。⑥子どもの行いや会話を先導せず、子どもが先導するようにすること。⑦心理療法家は、心理療法が緩やかなプロセスであることを熟知しており、簡単にやめたりしないこと。⑧心理療法が現実の世界に根をおろし、子どもに、その関係における自分の責任に気づかせるのに必要なだけの制限を設けること。
 遊戯療法の適用としては、情緒的な問題や心身的な問題(緘黙、不登校、チック、吃音、抜毛、アトピー、小児喘息等)から行動面での問題(落ち着きのなさ、多動、乱暴)など幅広く用いることができるとされている。表面に現れている問題や症状を除去することのみを治療の目標とするのではなく、遊びのなかで展開されるテーマから、子どもがどのような苦しみや困難、葛藤を抱えているのかということに目を向けていくことが大切である。

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