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愛着

 母子相互作用の情緒的つながりを重視した、英国の精神医学者Bowlby,J.M.は、「愛着」という概念を示し、子どもは最初一人の特定人物に対する愛着を形成し(モノトロピー仮説)、かつ乳児期になされるこの情緒的愛着の形成阻害は、後の人格発達における重篤な歪みをもたらすとの主張を行った。

 Bowlby,J.M.のいう愛着とは、恐れや不安の情緒が強く喚起されたときに、特定のその他個体との接近を通して、安全の感覚を回復・維持しようとする傾性を指し、愛着の対象は、危機の際の「確実な避難所」となり、情動が静穏化した後、それを拠点に外界に出ていくための「安全基地」の機能を果たすとしている。

 母子相互作用における特性と人格発達については、アメリカの心理学者、Ainsworth,M.D.S.らの主張が有名である。彼女らは、ストレンジ・シチュエーション法と呼ばれる実験室的方法を考案し、見知らぬ大人の入室と、2回の母子分離によって乳児に段階的ストレスをかけ、この母子と再会時における子どもの反応をみるというもので、その結果から子どもの愛着を大きく3タイプ(A:回避型、B:安定型、C:アンビバレント型)に分類している。この他、1990年代になってDタイプ(無秩序・無方向型)が見いだされている。

 また、Bowlby,J.M.の愛着理論の内的作業モデル(母親との愛着が内在化し、他者との関係の取り方として機能するモデル)の観点からストレンジ・スチュエーションいによるタイプ分類を見ると、回避型の子どもは、「自分は拒否される存在である」といったモデルを、安定型の子どもは、「自分は受容される存在である」「他者は自分が困ったときには助けてくれる」というモデルを、アンビバレント型の子どもは「自分はいつ見捨てられるかわからない」「他者はいつ自分の前からいなくなるかわからない」というモデルを形成しやすいと考えられている。


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