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「武道はアートなのよ。」

「綺麗に引けてるんだけどね・・・」

綺麗に引くことだけを目指してきた。

『正射必中』弓道はただ的に当てる競技ではない。正しく引けば自然と中る。そう教わってきた。だから、ただひたすら正しく、綺麗に引くことだけを考えてきた。

でもやっぱり弓道には的中が必要。どんなに綺麗に引けていても、中らないと昇段はできない。綺麗に見えていても、中らないということは、まだまだ正しくは引けていないということ。だって、正射必中なのだから。

ある時期からめっきり中らなくなった私に先生も困ってらっしゃる・・・「綺麗なんだけどなぁ、、う~ん、、ちゃんと狙ってる?

!!?? これは衝撃だった。

「狙っていいのですか?」だって、中りを気にするな、考えるなと育ってきた。

「・・・あのね、狙わないと中らないでしょ(苦笑)大抵の人は、中り出すと射を直さなくなるから、それを注意するために、的を気にしないようにと教えるのだよ。」

えーー!!!晴天の霹靂!

考えてみればわかることだった。『弓道教本第一巻』射法・射技の基本<目づかい>の中に、“的を見るときは、足踏み、弦調べ、物見、ねらいを定める以外にない。”とある。

こんな初歩的なことを・・・

そういえば、自分が半月でねらっているのか新月なのかもわかっていない。だめだ。大好きだった亡き先生に「お稽古の前には、ちゃんと番える場所、握る位置を確認して、毎回同じ条件で引けるようにするのだよ。」と教わっていたのに。大雑把な私は自分が楽な方へと流れていっていたんだ。これでは正しくなんて引けっこないし、中るはずもない。

そこで、隣にいらした先生に「先生は的のどこを見ていらっしゃいますか?」と不躾な質問をしてみた。

「正鵠よ。」

やっぱり。。。自分の至らなさにガッカリする私に、

「あのね、武道って英語でmartial artsというのよ。だから、弓を引く私たちはアーティストなの。あなたの精進したいという真っすぐな思いは、ちゃんと射に現われるから。思い切り自分を表現しましょう。」

という励ましのお言葉。

涙が溢れそうになった。

漫然と引いても意味がない。がむしゃらに頑張るのも違う。正しい理解と正しい方法によってのみステップアップする。また気持ちを新たにお稽古に励もう。

いつか「これが私の射です。」と表現できるときを目指して。



bxl_angie様、素敵なお写真お借りします。

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