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本日の一曲 20世紀前半のクラシック音楽

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連載「本日の一曲」のうち、1901年~1950年のクラシック音楽をまとめました。
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2024年5月の記事一覧

本日の一曲 vol.294 ラヴェル 鏡 (Maurice Ravel: Miroirs, 1905)

モーリス・ラヴェルさんのピアノのための「鏡」は、5曲からなる組曲です。 1902年、フランス・パリのオペラ・コミックでクロード・ドビュッシー(Claude Debussy)さんのオペラ「ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)」の初演が行われました。このころ、ドビュッシーさんは39歳でしたが、ドビュッシーさんの作品、とりわけこの「ペリアスとメリザンド」を支持する若い芸術家が集まり、このサークルが「アパッチ」と呼ばれるようになりました。 「アパッチ」

本日の一曲 vol.280 モンティ チャルダーシュ (Vittorio Monti: Csárdás, 1904)

ヴィットリーオ・モンティ(1868年1月6日~1922年6月20日)さんは、イタリア・ナポリの作曲家・ヴァイオリニストです。ただ、残念なことに有名なのは、この「チャルダーシュ」だけといってよいかと思います。 チャルダーシュとは、伝統的なハンガリーの民族舞踊で、その名前は、ハンガリー語で酒場を意味する「csárdá」に由来するそうです。日本人には懐かしく哀愁がただよう「遅い」部分から始まり、途中からとても「速い」部分からなるという構成になっています。もともとはヴァイオリンとピ

本日の一曲 vol.276 ピアノ・トリオ集補遺 ラヴェル ピアノ三重奏曲 (Maurice Ravel: Piano Trio, 1914)

モーリス・ラヴェルさんのピアノ三重奏曲が作曲された1914年は、1912年にバレエの大作「ダフニスとクロエ」を苦労して完成させ、1913年には作曲はほとんどせずに、イゴール・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)さんの「春の祭典」のリハーサルに立ち会った後、第一次世界大戦が勃発した年になります。ラヴェルさんは、1915年にはトラック輸送兵として第一次世界大戦に出征したのですが、1917年1月には最愛のお母様がなくなってしまいました。 このピアノ三重奏曲は、「ダ

本日の一曲 vol.266 ヤナーチェク ピアノ・ソナタ 「1905年10月1日の街角で」 (Leoš Janáček: Sonatá pro klavírní "I.X. 1905, Z ulice", 1906)

レオシュ・ヤナーチェクさんは、1854年7月3日、チェコのモラヴィアで生まれた作曲家です。同じチェコと言っても、ベドルジハ・スメタナさんやアントン・ドヴォルザークさんは西部のボヘミア出身であり、ヤナーチェクさんの出身地のモラヴィアはチェコの東部になります。 ヤナーチェクというと、有名なのはオペラ「利口な女狐の物語」だと思いますが、それでもあまり親しみはなかったと思います。日本で一躍有名になったのは、2009年に発表された村上春樹さんの小説「1Q84」の冒頭でヤナーチェクさん