大正十二年九月一日の大震に際して

一 大震雑記

「芸術は生活の過剰ださうである。成程さうも思はれぬことはない。しかし人間を人間たらしめるものは常に生活の過剰である。僕等は人間たる尊厳の為に生活の過剰を作らなければならぬ。更に又巧にその過剰を大いなる花束に仕上げねばならぬ。生活に過剰をあらしめるとは生活を豊富にすることである。」

芥川龍之介『大正十二年九月一日の大震に際して』(青空文庫)

震災が起きたのちの芥川龍之介の言葉。過剰の度合いは人によって異なると思うけれど、確かに私はこの言葉によって支えられた小説から花束を受け取っている。


ひとりの人間の真摯な仕事は  おもいもかけない遠いところで  小さな小さな渦巻きをつくる           「小さな渦巻き」茨城のりこ