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xii. 作品の窓⑤「誰もが小さなパズルのピースを持っている。」

「誰もがひとりひとり、シネコックである何かを持っている。料理が上手い人もいれば、狩猟や釣りが上手い人もいる。みんなが集まって教え合うことができたら素晴らしいことだ。誰もが小さなパズルのピースを持っている。日々の生活は、時間をかけた学びだから。」

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海に生きてきたシネコックの人たちにとって、鮮やかな紫と白が美しい、貝殻製のシェルビーズは大切な装飾のアイテムだ。

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日本の沿岸部の民俗や伝承を調べていると、鯨は良いものと悪いものどちらも運んでくる存在だったとわかる。それは、シネコックの信じる〈均衡性の精霊〉に似た観方かもしれない。鯨は豊漁をもたらす神であり、病の薬になることも、またある時は呪いによって病を広めることもあった。人の行いが、その違いを生じさせた。日本のある地域の、鯨が人を呪った伝承は、人が鯨の命乞いを無視していたことが原因だった。

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鯨が何らかのメッセージを伝える使者であるという考え方は、非科学的かもしれない。けれどニューヨーク市やロングアイランド周辺で起きているように、鯨が身近な海に戻ってきたことにより、人々は心を動かされ、自分たちの行動を変えようとしている。メッセージとは、人と自然との対話であり、一方通行のやりとりではないだろう。そう考えると、鯨はメッセージの運び手だ。

テキスト抜粋:『ありふれたくじら』Vol.6より

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