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fieldnotes(日々の記録)

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リトルプレス『ありふれたくじら』の制作プロセス、随筆、うつろいかたちを変えていく思考の記録、などなど。不定期の投稿は、こちらのマガジンにまとめていきます。
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2021年2月の記事一覧

P.9|行間の風景: 1. 「砂山の鯨」

「行間の風景」を旅する宮城県石巻市、牡鹿半島の先端にある鮎川浜は鯨の町として知られる。長年鮎川浜で暮らしてきた女性は、「鯨は陸(オカ)から見てもいねぇんだもん」と言った。と。彼女の夫は捕鯨船の銛打ちだった。捕鯨船は一度漁に出ると一週間は戻ってこなかったそうだ。沖のずっと向こう、どこまで行ったかわからない、と。 鮎川浜の人たちと鯨の関わりはさまざまだ。海を泳ぐ鯨を見たことはないけれど、鯨料理が得意な人。鯨の歯の加工の仕事を継いできた人。捕鯨船乗りや鯨の解体士も。 鯨という巨