見出し画像

グローバル企業におけるコンピテンシー評価ってマジ無理ゲーという話

グローバル企業において上司が外国人だったりすると本当に難しいよねという話をしようと思う。

当時、自分の上司はインド人、そのインド人の上司はイギリス人、そのイギリス人の上司はアメリカ人、という状況だった。この時点でなんかもう分けわからない組織だけれど外資系企業ではよくあることだ。

ある日、自分は他部署から、無理を承知とも思われるようなリクエストを受けた。

このリクエストには無理な点がいくつかあって、
・追加リクエストのボリュームが多い。その四半期に入っていたオーダーは10のところを、30まで増やしてほしい
・部署にリソースがない。外注できるたぐいのものではないので、自分と部下が気合と根性で頑張るしかない
・リクエストされた納期が短い。ひとつのオーダーに2ー3ヶ月かかるソリューションの提供を1ヶ月で提供しないといけない

という状況だった。

あまり説明すると仕事内容がバレるのでこれ以上詳しいことは言えないんだけれど、まあマクドナルドで急にハンバーガー100個つくれ、5分以内に作れ、お客様からオーダー請けているんだ、そんな感じだろうか。とはいえマックで働いたことないからよくわからないけど。

このリクエストに答えようとするとトレードオフとして、
・現在取り組んでいる長期的に重要なプロジェクトを後ろ倒しにしなければならない。それ以外の他のプロジェクトも犠牲になるかもしれない
・部下を説得しないといけない。うまく説得できて一緒にやったとしても気合と根性が必要なので精神を病みそうだし、なにより労働意欲が下がる
・そもそもリクエストされた30個のうち、どうがんばってもそのタイミングからでは20個程度しか期末まで終わらない

この状況において自分は、チームの状況と想定される結果を考慮し、「そのリクエストを請けることはできない」というコミュニケーションをした。どう考えてもそのリクエストを請けることによるダメージが大きすぎる。そして、そもそもそのリクエストを請けることによって短期的には会社にプラスになるかもしれない。ただ、他の犠牲になるプロジェクトによって、結果的にはマイナスが大きくなることは明白で、他のプロジェクトで大きな事故も起きるかもしれない。

この決断をしたときに、インド人の上司にこう伝えた。「苦渋の決断だったが、やむなく断ることにした。今の部署の力では無理だ。正直に誠意をもって考えた結果だ。」

しかし、ものすごく不評だった。なんでそんな対応をしたんだと、こっぴどく怒られた。そして僕はその期でのプロモーションを逃した。

彼の言い分(もしくはインド人に見られる傾向なのかもしれないが)は、何かをやれと言われたときには、基本的に「できない」と言うな、ということだった。とりあえずなんでもやる、という姿勢が大事だからという理由だった。

彼が自分だったら、とりあえず「できる」という返事をする。そして、やっていくうちにできない事がわかるから、その際に「できない」という結論を出せということだった。プロジェクトがぐちゃぐちゃになってもそれはそれでいいだろうと。お互い様だろうから。

余談だが、インドには交通ルールを守るという考え方がないらしい。交通ルールは、事故が起きたときに人を裁くときの基準だと。事故が起きない限りは交通ルールを守る必要などないだろうと。

まあ普通の日本人が聞いたら、ぶったまげるだろうけれど、まあそういうことです。

納得がいかなかったので、その上のイギリス人の上司に同じ話をしたところ、全く違うアドバイスをもらった。それは、「ほのめかすように断れ」ということだった。「1000万円の外注費があれば乗り越えられる」「明日から派遣社員を2人雇えば請けられる」というような具合。実際にそんな予算などどこにもないし、日本市場で派遣社員を雇うには数週間はかかるので、暗に「無理」といっているようなものだ。明日から2人雇うってなんだよ。バイトじゃないんだし。いや、バイトでも流石に明日には集まらないだろうよ。。

コンピテンシーというのは、その企業において優秀な社員に見られる行動特性と定義される。詳しい説明はWikipediaに譲ることにするが、このときに悟ったこととして

・インド人からみたコンピテンシーと、イギリス人からみたコンピテンシーは違う。上司が属する文化圏によって評価基準が違うということは、自分の行動特性も、その上司の文化圏によって変えるべきだったんだろうか。
・そのインド人は、他の部下に対しても同じ評価基準を適用するのだろうか。彼はシンガポールにいて、他にシンガポール人と中国人の部下がいたのだが、その人達にも同じような行動特性を良しとしたのだろうか
・僕が断った相手は日本人なので結果的にはわかってもらえたのだが、このケースのように、日本人同士で良いと思うようなやりとりがあったとしても、そのインド人から見ておかしい点があるのであれば、それはそれで低い評価につながったのだろうか。結果論にはなるが、あのときの自分はインド式のコミュニケーションを、日本人に対してするのが正解だったのだろうか。

やや乱暴な単純化ではあるけれども、

・石橋を叩いてリスクを計算し、その上で慎重な結論を出すような日本式が良かったのか
・断るという選択肢は始めから無い。とりあえずやってみて、ダメならダメという結果がでればそれで良し、というインド式が良かったのか
・交渉上手になってうまいことかわすことを良しとするような、イギリス式が良かったのか

えー、グローバル企業におけるコンピテンシー評価ってマジ無理ゲーです。

お読みになっているなかで、人事関係の方がいらっしゃいましたらコメントなどいただければ。こういうケースってどう評価されるべきなんですかね。

この場で言いたいことは以上になります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?