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🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その3)

ガムラン組曲「月影之川」

Wuilgeng (ウィルジュン)

ジャワ・ガムランの古典曲。地上の平和を願う曲です。

祈祷文

 2022年は谷中の天王寺というお寺の講堂で演奏しました。本尊は地蔵菩薩。「ムーンリバー」は真の友情について、マーク・トウェインが書いた物語「ハックルベリー・フィンの冒険」から生まれた歌です。そこで、私たちの友情のために祈ります。

私たち一人ひとりの心が友情を育てられますように。
誰と一緒にいるときも、その人を友として、心から大切に慈しむことができますように。
悪い性質の友が、悪や辛苦に苛まれているとき、大切な友情を見つけたと思い、友人を慈しむことができますように。
友人の被害と苦しみは、全て私が引き受けられますように。
私たち友情に虹がかかったとき、過去も現在も私たちも全て幻であると知り、全ての執着から解き放たれますように。

第一楽章 古ジャワ語

“Benawi awewayang wulan” ブナウィ アウェワヤン ウラン
これで「ムーンリバー」と言っています。

 「♪シラシ・♪シラシ・」という伴奏の中で、「ムーンリバー」の古ジャワ(カウィ)語を白拍子とガムランの男声の斉唱(ゲロン)が交互に歌います。白拍子は舞い続けます。

 私の書いた子どもの落書きのような譜面は、ジャワの譜面に書き換えるとガムランの数字譜のようになりました。

元々の譜面
ガムランの数字譜に直したもの

 ペロッグ音階のバラン調で。「シ・ド・レ・ファ#・ソ」。主音の「シ」は原音ではA#。私の声のキーに自然となってしまいました。

第二楽章 古ジャワ(カウィ)語 その2

 ジャワガムランに「インバル」という、ヨーロッパ音楽でいう「アルベルティバス(♪ドソミソ♪ドソミソ)」みたいな音形の型があります。それは、波立つ水面に光が反射してキラキラとしている情景を思わせます。

 それと「スカラン」という音の高い方から低い方に向かうパッセージのパターンがあります。これは天から花がひらひらと落ちてくるような、舞台効果でも時々使うし、仏教儀式で「散華」という蓮の花びらの形をした紙をひらひらと撒いているようなパッセージです。

またしても子どもの落書きのような譜面

 この「インバル」と「スカラン」を組み合わせるのが、ジャワガンランの定型ですが、そこに「ムーンリバー」をテンポがかろうじてあるような白拍子の歌舞を合わせる。このテンポのあるガムランとテンポのないような歌を合わせるスタイルを「パララン"palarang"」と言うそうです。

「インバル」と「スカラン」を演奏する楽器、ボナン(Bonang) 
ボナンの終始音に合わせて演奏するグンデル(Gender)。
曲と曲との間をいつも繋いでくれる演奏もしてくれている。

 ガムランと白拍子のパラランを作りました。白拍子のソロと舞で演奏されます。

 調は、第一楽章と同じくバランです。

<つづく>


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