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ちっぽけな自分に気づく

どうしたら、気にせずにいられるのだろう。小学生の頃から、私はずっとその悩みを抱えていました。
 
遠足、社会見学、キャンプ、修学旅行の楽しさは、誰と一緒に過ごすかで決まります。くじ引きで決めてくれればいいのですが、先生も良かれと思ってなのか、教育の一環と思ってなのか、学級委員を司会者として、子どもたちだけで、グループ分けをするように指示されます。
 
そういうとき、小学生は残酷なもので、こいつと同じグループになりたい、こいつとは同じグループになりたくないという2つの思いがぶつかり、どうしても仲間外れになる子がでてきます。発達が遅いなどの理由により、クラスは同じでも国語や算数といった授業は、別の場所で受けるような子です。ここではA君とします。
 
どういうわけか、A君に頼りにされることが多く、「グループ分けはじめ!」の合図とともに、A君は私のもとによってきます。表面的にも内面的にも、快く迎え入れることができればよいのですが、言葉では「いいよ」と言っていても、心のなかでは「なんでいつも俺ばっかり」と思っていました。いつも俺ばかりだから、今回は代わってよ、という思いで目配せしても、クラスメイトは気づいていても目を合わせようとしない。怒りとも失望とも言えない感覚。
 
この感覚って「食堂のせきとり合戦」とよく似ているのかもしれません。スキー場、テーマパークなど、人数に対して席数が足りない状況のとき、空気を読まずにダラダラと居座ったり、会社の食堂で、自由席なのに長い間、同じ席で食事しているからといって、「そこ俺の席だから」と言ってみたり……。自分の利益を優先し、周囲が見えていないような人がどうしても受け入れられないのです。
 
そんな私は、周りの人たちの気持ちが分かるタイプの人間だと思っていました。そうに決まっている。そう思っていたのに。ストレングスファインダーなるもので、自分の強みを診断してみると、トップ5の資質は、
 
収集心  (戦略的思考力)
慎重さ  (実行力)
自我   (影響力)
内省   (戦略的思考力)
最上志向 (影響力)
 
ストレングスファインダーでは、34の資質と4つの領域に分けられる。上の例では左側が資質、右側のカッコ内が領域。領域は、戦略的思考力4つに分けられ、せ私のトップ5には、戦略的思考力、実行力、影響力の3つが入っていましたが、残るひとつの「人間関係構築力」が入っていなかったのです。
 
いつも仲間外れができないように、寂しい思いをする人ができないようにと周りを見ていたつもりでしたが、人間関係構築力は必ずしも高くはない。
 
実は、会社の研修プログラムでも、「あなたは人に興味がない」と言われたことがあるのです。ストレングスファインダーだけでなく、会社の研修プログラムでも、人間関係を作る力が不足していると判断されているということは、私はA君を仲間外れにしないようにしようというよりも、私自身が損をするのが嫌なだけだったことに気づきした。私のやさしさは、水たまりに張った薄っぺらい氷のような、薄く脆いものだったようです。
 
思い返してみれば、自分が損をしてまで、自分が所属するクラスやチームのためを思って行動してきたことはなかったのかもしれない。ほんの少しの努力で、自分がいい思いをできそうなことをかぎ分けて、必要最小限の努力をしてきたのかもしれない。そんなことを考えていると、行き場のない自己嫌悪に陥り、いろんなことが手につかなくなってしまうことがあります。
 
しかし、ストレングスファインダーの強み診断士の資格をもつ友人によれば、人間関係構築力が低いというのは、逆に言えば、自分自身のために時間を費やすことができるということでもあるというのです。
 
A君と同じグループになれば、A君から目を離さないようにしなければいけない。それによって、自分の時間がなくなることを恐れているからであって、仲間外れができないように、皆が仲良くできるようにというのは後付けの理由だったのです。
 
そのことに気づいてからは、自分の時間を大切にし、一人で思考を深める時間を確保していくことをまず考えるようにしています。自分の時間があるという安心感があれば、人にやさしくなれる時間が増える。自分の思考が十分に深まっている感覚があれば、誰かのためを思って行動できるようになる。
 
A君はいつも、申し訳なさそうに、私のところにきて、「同じグループになろ?」って言っていたように思います。言葉にはしなくても、態度に出していないつもりでも、A君には私の本心は気づかれていたのだと思う。表面的に仲良くしても、心の深いところでは、A君を傷つけていたのかもしれない。クラスメイトもそんな私の薄っぺらさに気づき、近づいてこなかったのです。
 
ちっぽけな自分から目を背け、自分を認めてあげることができていれば、A君も私ももっと楽しい時間を過ごせていたように思います。
 
私には3人の娘がいますが、私の時間は戻せなくとも、娘には、娘自身の本心から目を背けず、内面から湧き出る本当のやさしさに気づけるように、声かけをしていきたいと思います。
 
あなたは、自分の子どもや同僚に、自分の経験をどう伝えていきますか?

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