「あなたは正しい」vs「私の何を知っているんだ」/ガールズバンドクライ
『ガールズバンドクライ』というアニメを見ている。8話でまた、仁菜と桃花の感情のぶつけ合いがありそうだ。そして、それは「あなたは正しい」vs「私の何を知っているんだ」というものになるのだろう。そういうことってあるよなぁ、と思う。しかし同時に「だれが何を守ろうとしているのか」が混乱していて、どうしてそうなってしまうのだろう、とも思う。今日の8話放送でいろいろ答えが出るだろう。けどそのあとで私は「考えていたこと」を忘れてしまうだろうから、今考えていたことをメモっておこうと思う。
#ネタばれあり 。
●無責任に見える「あなたは正しい」
仁菜は「桃花さんが正しいこと」を証明したいと真剣に思っている。桃花の過去はよく知らない。なのに「正しいこと」は疑っていない。それは一見無責任に見える。私の何を知っているんだ。桃花はそう感じる。でも仁菜は無根拠に「正しい」と言っているのではない。確信がある。けど言語化できない。あえて言うなら「桃花の歌を信じているから」だろうけど、それだけでは何かが足りない。足りないのは何か。
●作品からわかることの限界
素晴らしい歌を作れる人が「正しい」という保証はない。人は多面的だ。良い歌が作れる面とは別の面を持っている。いわゆる「とがっている人」が「いい歌」を作っても、その人が正しいなんて私たちは信じない。「とがっている人」は凡人の想像を超えてゆく。とがっている人が住む世界では「正しさ」と「間違い」の差は、私たちほどはっきりしていない。凡人の理解を超えた「素晴らしいもの」に手が届く人は、凡人の理解を超えた悪にも手が届いてしまう。それが私たちの実感だ。
●会ったらわかった、の理屈
だから仁菜は、「歌のすばらしさだけで桃花を理解した気になっている」というわけではない。あの歌は私の心の奥深くまで届いた。だから作った人は「その方向にとがっている」。それが「歌から得られる情報」だ。そして仁菜は桃花と出会う。付き合いは浅い。まだ知らないことだらけだ。でも、どういう人なのか、仁菜にはわかる。誰よりわかる気がする。その感覚は私にも覚えがある。その確信は、きっとこういう感じにやってくる。
仁菜は歌から「桃花の一つの側面」を深く知っている。けど「別の面」は深くは知らない。それでも「深く知っている側面」と、ちょっと知っている「別の面」の二つで「桃花という人全体を貫く本質」がわかる。それができているのは、きっと自分だけだ。そう信じることができる。
こういうタイプの「会ったらすぐに分かった」という確信が降ってくることがある。そしてそれが「浅い理解」だったことが後でわかることもよくある。それは「深く知っている一面」が、もっと根が深いものだった、という場合だ。桃花の歌はどういう場所から生まれてきたのか。その場所は、仁菜感じているものとは少し違うものなのかもしれない。もしかしたら、それが物語後半の核になるもの、なのかもしれない。
●さらに、私の思考の暴走メモ
仁菜が「桃花を深く理解できている」と信じていて、でももっと深い一面を知ってショックを受けるとしよう。そういうときにこそ、人は本当の幸せを感じることができるのかもしれない。なんだか「そういう感じ」がするのだ。それは、自分のための歌だと思ったものが、桃花の歌でもあったことの発見で、それでも桃花と自分が「別の人間である」ことを思い知らされる瞬間だ。でもそれは「別の人間」が本当に繋がることができる、ということだ。同じだから繋がったんじゃない。別なのに繋がったのだ。そういう発見でしか、ひとは本当の意味で孤独から救われることはないのかもしれない。
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