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仁菜の成長、智の成長、私たちの成長/ガールズバンドクライ 9話

8話まで狂犬だった仁菜は、9話では人が変わったように穏やかだった。でも私は「仁菜は変わったわけではない」と思っている。私たちが「本当の仁菜」に気付いただけだ、と思うのだ。
それでも、仁菜は1話から変化している。それは間違いない。狂犬の成長は、もっとわかりにくい形で起こっている。それにはスバルが重要な役目をしているのだと思う。感じたことをメモしておく。

#ネタばれあり

仁菜はどういう人なのか、私の考えを書こう。
仁菜は「心の声を抑圧している人」には見境のない怒りが湧く。でも「心の声を開放」をしたときに、それが罵倒のような形になっても怒りは湧かない。つまり「心の声を開放する人には寛容で、開放しない人に怒りが湧く」という点で首尾一貫している。
仁菜は1話からずっとそういう奴だったのだ。だから9話の仁菜は、成長して丸くなったのではない。人の本質はそんなに簡単に変わらない。だから9話で変化したのは仁菜ではなく、智と私たちの方だろう。仁菜の新たな面を発見して変わった。それは成長と呼べる変化だ。

もちろん、仁菜も作中で成長してる。仁菜はスバルに対する態度を大きく変えた。それは成長と呼べるものだろう。でも、どうやって仁菜は態度を大きく変えることができたのだろうか。
スバルは桃花や智とは違って「自分にうそをつける人」だ。だから出会ったときに、仁菜はトゲトゲを出して警戒していた。スバルは親切にしてくれるのに、あからさまに避けていた。しかし今、スバルは「警戒せずに本音を話せる相手」になっている。仁菜が変わったのはこの点だ。ちょっと複雑になったので整理しよう。

<仁菜のトゲトゲパターン>
①「自分にうそをつけない人」が「心の声を抑圧」➡ トゲ発生(桃花)
②「自分にうそをつけない人」が「心の声を開放」➡ 歓迎(智)
③「自分にうそをつける人」 が「心の声を抑圧」➡ トゲ発生(スバル)

この③のパターンが「すっかり」変わったところ。そしてそれが変わったのは3話だ。自分にうそがつける人が、でも嘘をつかずに「心の声を開放する姿」を目撃して、仁菜は変化した。ここで重要なのは「このときスバルは変化していない」ということだ。仁菜がスバルの新たな一面を発見した。でもそれは仁菜が知らなかっただけで、前からスバルはそういう人だったのだ。私に見えているものは世界のすごく一部でしかない。そのショックが仁菜を変えた。これは9話で智と私たちが「仁菜の新たな一面」を発見して変化したのと同じ構造だ。

私たちは変化する。成長する。でも、なにも変わっていないのに、ある面を発見されて「成長した」と言われることがある。「心の成長だ」と私たちが感じることは「発見」であって、本当はなにも変化していない。変化しているのは「成長したなぁ」と思っている方なのだ。これは、私には重要なことのように思える。子供の成長を目にするとき、本当に成長している瞬間には気づけない。事後的に「いつの間に成長したんだ?」と驚くしかない。でもそれは、その驚きによって自分が成長する番なのだ。私たちはお互いに「発見の驚き」の輪でつながっている。そう思うと、ちょっと謙虚な気持ちで生きていけそうな気がする。


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