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【毎週ショートショートnote】レトルト三角関係

 たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加します。

【レトルト三角関係】

「なら私が付き合ってあげようか?」
 学校からの帰り道、彼女と別れてつらいとグチっていると、さらっと幼馴染はそう言った。
「はぁ?」
 動揺して思わず大声がでる。
「誰がお前なんかと」
 プイとそっぽを向くが、頬が赤くなっているのが自分でもわかる。
 実は本命は目の前のミコなのだ。
 それを認めたくなくて色んなコと付き合ってきた。
「えー、いいじゃん。私本気だよ? 証拠みせるから、ちょっと待ってて」
 ちょうどミコの家の前に着いていた。

 数分後、ミコが何かをたくさん持って現れた。
 銀色のパウチ……。大量のレトルトカレーか?
「あけてみて」
 切れ目からピリとあけると中から声がした。
『アッ君大好き! 三角関係なんてヤダ! 絶対振り向かせるんだから!』
 ミコの声だ。
「何これ?」
「恋のレトルトパウチだよ。溢れた恋心を閉じ込めたんだ」
 嘘だろ? でも確かにミコの声だ。
 なんとなく古そうなパウチを一つとり、あけてみた。
「アッくんだあいすき。こんどいっしょにブランコしようね。ブラ…ブラ……」
「あ、賞味期限切れのも混ざってるかも。十年以上片思いしてたから……」
 真っ赤な顔でうつむく幼馴染は最高に可愛かった。

 彼女になるまであと二秒――。

(516文字)

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