Al Schmittの話 その3


前回の続き。

この記事を翻訳しつつ紹介する。

無修正

Schmittによると、どの曲も同じレコーディング手法で録ったという。毎日三時間のセッションを二回、それを週に五回のペースで三週間くりかえした。セッションの合間に、次に録る予定の曲、古いSinatraの録音物をポータブルプレイヤーで聞いた。同じ様なアプローチを試みるためではなく、解釈のアイデアを得るために。時に数時間にもわたって次の曲をどう演奏するのか話し合うこともあった。

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バンドのベーシストが音楽監督だった。メンバー用にコード譜を書いて、それぞれのプレイヤーのためのラフスケッチを作っていた。適切なパートを適切に演奏する段取りのためにかなりの時間を割いた。快適な状態でお互いの音がよく聞こえる状態で作業を進めた。なかでもDylanがとりわけ要望を出して、どのようにプレイしてほしいのかを指示していた。彼がプロデューサー(Jack FrostはBob Dylanがプロデュース業をやるときの芸名)だったので、全権を持っていたというわけだ。テンポに意見を言って、リズムギターの弾き方にも、ペダルスチールギターにも口を出して、などなど。

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(CapitolのB Studio)

「1テイクか2テイクやって、コントロールルームに入ってきてプレイバックした。みなが自分のパートをどう改善するかアイデアを持っていた。ディランはもっと良いヴォーカルができると思っていたかもしれない。そういったバランスについて話し合った。最初のテイクがOKテイクになることもあり、その場合は私が調整することは何もなかったが、ほとんどの場合は聴いた後に彼らのアイデアが出てきて、私も『ここはもう少し音量が必要だな』とか『ここはもう少し小さくしよう』などと言って、それをレコーディングルームの中でバンドに調整してもらった。ギターソロがあった時は、プレイヤーは少し音量を大きくして弾いていただけだった。フェーダーを突くのではなくて自然な感じにしたかった。ボーカルはフェーダーを触ったけれど、それ以外の部分は一度セットアップしてしまえばスタジオの中で音のバランスが取れていた。そのあとは、やることはほとんどなかった。それだけだよ。編集も補修もピッチ修正もしていない。全てがありのままだった」

ミュージシャンとマイクが正しい場所に正しい方法でセットアップされているかどうかが大事であり、これが最初のセッションでのしSchmittの仕事のほぼすべてだった。しかしながら、Dylanのマネージャーが伝えてきた異常な要求によってSchmittの仕事はやっかいなことになった。

「マネージャーのJeffはが言うには『あまりたくさんのマイクを見たくない』とBobが言っているというのです。だから私は、できるだけマイクを減らして、かつそこにあるマイクをできるだけ目立たなくするようにしなければなりませんでした」

とシュミットは振り返っています。なぜそうしたのかは分かりません。おそらくもっとリラックスしたリビングルームのような雰囲気で、自分やミュージシャンが録音されていることをあまり意識しないようにしたかったのでしょう。そして、近年のレコード制作に必要とされるようなやりかた、つまり、ヘッドホンを使ったりミュージシャンが自分のキューミックスを手元でいじったりするような手法ではやりたくなかったんだ。だからヘッドフォンは使わなかった。ある時はアコースティック・リズム・ギターの音がDylanにはよく聞こえなかったので、ギタリストを近くに移動させた。ミュージシャンを適切な位置に配置するだけで、ディランの周りにいる全員のバランスが取れた。


以下、作ライくんにコーヒーをおごるためのコーナーです。内容はありません。

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