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見て良かった今年の公共放送ドラマ・2019

#テレビドラマ #entertainment

 今年も公共放送のテレビドラマをいろいろ見ました。それらを振り返って、「良かったなあ」「見ごたえがあったなあ」と思えたものを挙げていきます。昨年はTwitterにこのように書きました。

 「良かった」「見ごたえがあった」は、「再放送があったら見てほしい」「録画し損ねていたら、録画してほしい」、それでもって、できることなら一晩語り合いたいですね、というような曖昧な基準です。
 そのほかは、
 ・2019年に初回放送されたもの。
 ・国内ドラマだけです。
 ・ドキュメンタリーのドラマパートを含みます。
 ・「連続テレビ小説」と「大河ドラマ」は、いろいろな面で規模が違い過ぎるので含みません。
 ・「公共」放送と思えるかどうか。
 といった制限を加えました。
 以下、初回放送順に並べて、ネタバレにならない程度に、簡単な感想を書きます。

○『満島ひかり×江戸川乱歩』
 BSプレミアム 全1回 初回放送2018年12月30日
 https://www4.nhk.or.jp/P3860/
 はなから上の決まりごとを破り、2018年のものです。昨年末、間に合わなかったので、今年の分として入れます。「シリーズ・江戸川乱歩短編集」の第3シリーズ。第2シリーズまでは、満島ひかりさんが明智小五郎を演じてましたが、本作は、その縛りを取り払ってます。満島さんが明智小五郎を演じないパターンはどうなるかな、と見ましたが、第2シリーズまでと同様に、妖しげな雰囲気が保たれていて、乱歩の世界が見事にドラマ化されてました。
 なお、今年の年末特別ドラマ『黒蜥蜴 BLACK LIZARD』(BSプレミアム、2019年12月29日放送)は、このシリーズではありません。全くの別物(のはず)です。

◎『トクサツガガガ』
 総合・ドラマ10 全7回 初回放送2019年1月18日
 https://www.nhk.or.jp/nagoya/gagaga/
 主人公・叶は「特オタ」であることを隠して生活しています。しかし、次第にその殻が破れていき友情が築かれていく展開が、まさに「トクサツ」のごとく熱いです。
 原作コミックそのままのような俳優陣の吹っ切れっぷり、東映の協力を得た特殊撮影パート、数々の「元ネタあり」など、見所盛りだくさんです。
 本作の主題は、おそらく「毒親との対峙」だと思います。ヒーローも、爆破も、友情も、CGも、パロディも、全て、そこに収束していきます。

○『みかづき』
 総合・土曜ドラマ 全5回 初回放送2019年1月26日
 https://www.nhk.or.jp/dodra/mikaduki/
 子供の教育、家族の物語。そしてラブストーリー。それらがバランスよく、テンポよく、すんなりと頭に入っていきました。
 ラブストーリーの部分、もっと限定すると、高橋一生さんの艶っぽさにやられます。滑稽さとスマートさと助平さとを同時に出せるのはすごいなと思います。それらを自然に伝えられる素地として脚本の妙も。その脚本は水橋文美江さんによるものです。『みかづき』を観て、「『スカーレット』はしっかり観るぞ!」と決めました。

○『詐欺の子』
 総合・NHKスペシャル 全1回 初回放送2019年3月23日
 https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20190323
 被害が続く特殊詐欺・振り込め詐欺を取り上げた作品で、ドキュメンタリーパートとドラマパートの混成となっています。特殊詐欺の末端が若年層の「使い捨て」であることや、詐欺被害者のその後が、丹念な取材に基づいて描かれています。報道班、ドキュメンタリー班、ドラマ班の各部署の方々が、じっくり話し合って練り上げたのだろうな、という意気込みが感じられました。
 同じく特殊詐欺を扱ったドラマに、8月から9月にかけて放送された『サギデカ』もあります。こちらは娯楽性をやや強めたもので、先日、文化庁芸術祭(テレビ・ドラマ部門)大賞を受賞しました。『サギデカ』には、『詐欺の子』とかなり似た表現もあり、ベースのひとつになっていたのかもしれません。そのため、初見の効果といえるインパクトを重くみて、本稿では『詐欺の子』を挙げました。

○『長閑の庭』
 BSプレミアム・プレミアムドラマ 全4回 初回放送2019年6月2日
 https://www6.nhk.or.jp/drama/pastprog/detail.html?i=5850
 とにかく綺麗だった! 初めて「4Kの画面で見たい」と思ったドラマでした。橋本愛さん演じる主人公・元子の不器用な一途さと、田中泯さん演じる榊教授の解きほどけていく頑なさ。この二つの心情の交差に引き込まれました。
 次回予告で出てきた場面のいくつかが、本編で使われていませんでした。できることならば、「完全版」として再放送してほしいです。

○『これは経費で落ちません!』
 総合・ドラマ10 全10回 初回放送2019年7月26日
 https://www.nhk.or.jp/drama/drama10/keihi/
 多部未華子さん演じる森若さんのかわいらしさ!
 ……いや、それだけではなく、経理部の数字から、個々人の日々の営みや情け、そういった数字でないものを見出していく物語に心地よさを覚えました。
 阿部真央さんによる主題歌が「ドラマバージョン」になっていたのも、丁寧だと思いますし、好感が持てました。
 そして、年始に地上波再放送決定です。1月2日(1日深夜)から4日(3日深夜)までのまとめ再放送です。
 放送終了直後、多部さんが結婚なさったという報道の、さらにその後、小説家・万城目学さんのツイート。

 ミドル……。

◎『だから私は推しました』
 総合・よるドラ 全8回 初回放送2019年7月27日
 https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/doruota/index.html
 原作無し、森下佳子さんオリジナル脚本です。「原作無し」と特別に書かないといけないくらいに、近年は「原作(原案・モデル)あり」が多いような気がします。
 サスペンス、ミステリー要素が多分にあるので、ネタバレを回避すると、面白かった部分を詳しく話せない、書けないのです。ただ「たいそう面白かった!」としか書けないのです。
 少しだけ許されるのならば、「語りの構造」とカメラワークが実に巧みだったことを挙げましょう。また、主演の桜井ユキさんと、キーパーソンを演じた笠原秀幸さんを知ることができました。今後、お二人の益々のご活躍を期待しています。さらには、……と、続けていくと、ネタバレに入りそうなので、この辺りで。
 DVD発売が決まっているので、それまで再放送はないと思いますが、落ち着いたころに再放送してください。

○『昭和天皇は何を語ったのか~初公開・秘録「拝謁記」』
 総合・NHKスペシャル 全1回 初回放送2019年8月17日
 『昭和天皇は何を語ったのか~初公開“拝謁記”に迫る~』(90分版)
 Eテレ・ETV特集 全1回 初回放送2019年9月7日
 https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586180/index.html
 初代宮内庁長官の田島道治が、昭和天皇との対話を記録したノート、「拝謁記」を元にしたドキュメンタリーです。一部に再現の体裁でドラマパートが挿入されています。ドラマパートの台詞は、ほぼノートに記録されたままのものでした。
 田島道治を橋爪功さん、昭和天皇を片岡孝太郎さんが演じていらっしゃいました。私の記憶は定かではないですが、テレビドラマで記録映像ではなく、かつ、全身が映る形で、昭和天皇が「役」として演じられたのを初めて見た気がします。その点で印象に残りました。

○『Wの悲劇』
 BSプレミアム・リバイバルドラマ 全1回 初回放送2019年11月23日
 https://www.nhk.or.jp/drama/dsp/wnohigeki/
 「リバイバルドラマ」とは何ぞや? と思って観ました。観終わって「なるほど」と思いました。
 財閥、殺人、深窓の令嬢、誰が、なぜ、どのように……、というドラマは作られ過ぎていて、もはや、漫画やコントでパロディとしてしか見られなくなってます(それすらも作られ過ぎているような)。その元ネタを見ることができた気がしました。観ているうちにいつボケが出てくるのだろうか、と不思議な感覚に陥りました。もちろん出てきません。
 やや大仰に過ぎる演出・演技はあるものの、それが「リバイバルドラマ」たらしめているのでネガティブさは感じませんでしたし、ミステリードラマとして手堅く丁寧に作られていました。

 この中で、番組名の前に◎をつけたものが、「とりわけ良かった」と思ったドラマです。『トクサツガガガ』と『だから私は推しました』の二作は、頭二つ三つ抜け出ていた感じがします。『トクサツガガガ』に対しては私自身の「名古屋びいき」が影響しているのではなかろうか、と考えましたが、それが無くても面白さは差し引かれないことにしました。審査員は自分一人ですから自由です。
 どちらも「オタク」を扱っているのが、たまたまなのかどうか。もう一点、どちらも「自分にはそう見えているが、他の人もそのように見ているわけではない」ことを強く押し出しているな、と思っています。

 参考:2019年のドラマ一覧(国内ドラマ)
 https://www6.nhk.or.jp/drama/dramalist/list_year.html?y=2019

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