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君の不幸は蜜の味 あらすじ+1話【創作大賞 漫画原作部門】

一言で
「被害者の不幸を食べることで犯人を探し出し、制裁を加える話」

あらすじ
 大(だい)は殺人犯を殺すアンチヒーローとして暗躍している。弟とペットを養うため、鬱々とした感情を抱きながらも殺しをしている。ちょうど100件目の事件を終わらせた日、大は倒れてしまう。彼の雇用主のマスターが”癒し”が必要であろうと、大に紹介した場所はラブホテルであった。部屋には一人の女がおり、早々に大の服を脱がし始める。彼女は大の胸に舌を這わせると味わい、大の抱えている思いを言い当てる。大は驚き、部屋から出て行ってしまう。
 次の日大は、事件の謎解きができる人員を加えることを伝えられる。その人員こそ、昨日の女”幸”であった。幸は”不幸を食べる”ことで事件の真相を追求できるというがーー。

本編


①〇廃墟(朝3時)
 ・大、ナイフを持ってケガして座り込んでいるS田に近付いている
大「10年前に20人殺したS田」
S田「俺の元にもついに来ちまったか。でもお前に裁かれる筋合いはないぞ。正義のヒーロー気取ってるが、お前だってただの殺人鬼だからな」
大「裁く? 俺は殺しを正当化しようなんぞ一ミリも思ってない」
S田「じゃあなんのためにお前は人を殺すんだ?」
大「ただのお仕事だ。お前はなぜだ?」
S田「なんかむかついたからだ。子供は弱くて殺しやすかったし」

 ・大、ため息をつきながらナイフを回す
大「殺す理由に、大義名分なんてないよな」

 ・S田、高笑いする
S田「ああ分かったぞ。これから先、お前には不幸しかない。地獄で会おう、”アンチヒーロー”」
大「嫌なこというなあ」
 ・大、S田にナイフを振りかざす

〇同
 ・大、童謡を歌っている


②〇ラーメン屋(昼12時)
 ・テレビ(ニュース)ではコメンテーターとアナウンサーが話している
 ・サラリーマン1(40歳),2(25歳)がテレビを見ている
 ・大、ラーメンを食べている
<テレビ>
 ・大(戦隊ものの仮面を被っている)とS田の死体(モザイク)、映っている画像が表示される
アナウンサー「これがアンチヒーローのホームページにアップロードされた画像です。また、制裁加えてきた、とのコメントが添えられていました。今月に入って7件目、そして全体で100件目の犯行です。以前警察はその正体を突き止められていません」
コメンテーター「(興奮している)一般人が正義を掲げて殺人をするなど由々しき事態ですよ。何のための法律、制度でしょうか? そもそも警察が」

<ラーメン屋、カウンター>
サラリーマン1「あの小学生狙いの連続殺人犯、殺されたんだ」
サラリーマン2「また”アンチヒーロー”がやってくれたんだな」
サラリーマン1「ここまでくると、アンチヒーローじゃなくて真のヒーローだとさえ思うよ」
サラリーマン2「テレビではコメンテーターもああ言ってるけど、内心みんな有難がってるよな」

 ・大、舌打ちをして、ラーメンを半分残した状態で、立ち上がって店を出ていく


〇道
 ・活動家(60歳)、演説をしている
 ・大、支援者からチラシを受け取り見ている
活動家「警察は自分たちの怠慢さを棚に上げ、アンチヒーローに指名手配を出しています。でも加害者に鉄槌を下し、新たな事件の芽をつむぎ私たちに真の安心を与えるのは誰でしょう? 実際に被害者の、その家族の心を救っているのは誰でしょう? アンチヒーローこそ私たちを救うのです。彼の指名手配を取り下げ、正当性を与えるためにご署名を!」
 
 ・聴衆たち(20人)、拍手する
 
 ・大、鼻で笑う
大「何が正当性だ。くだらねえ」
 ・大、活動家たちの前でチラシを破り捨てる


③〇事務所
 ・賢(32歳)、ドアのすぐ前で両手を広げている
 ・大が事務所に入ると、賢が肩を組む
賢「アンチヒーロー様のお出ましだ。よくやったな、大。また急上昇ワードに出てるぜ。ネットでも大盛況だよ。お前のおかげで安心して暮らせるって」
大「(興味なさそうに)それはよかった」

 ・ツツ(フレンチブルドッグ)、大に寄っていく
 ・大、ツツを抱っこして顔を近づけてデレデレする
大「(デレデレ)ツツちゃん、ただいま」

 ・賢、ホワイトボードをめくって100という数字を見せる
賢「お前が解決した事件は今日がちょうど100件。この活動を始めて一年弱、おめでとーーう!」
大「うっせー」
賢「(馬鹿にしたように)ご機嫌斜めでちゅか?」

 ・大、手を上げて賢を威嚇する
大「ちょっと仮眠とる」

 ・大、倒れる
 ・きり、不安そうに周りをうろうろしている
賢「(呆れるように両手を広げて)おい、またかよ」


④〇病院
 ・大、ベッドで寝ていて目を覚ます
 ・賢、電話をしてる
賢「マスター、大が目を覚ました」

 ・賢、スピーカーをオンにして話す
賢「原因不明はストレスだと。今月3回目だぞ」
大「ちょっとした夏バテだ。そもそも原因が分かんないもんを全部ストレスだって言ってるだけだろ」
マスター「弱い。情けない、大。どうしたんだ。人を殺すのが辛い、とかいうのか?」
大「なことはないっす。今までに500人以上は殺してるんだ。慣れてる」
賢「はあ。世間様だってはみ出し者のお前に馬鹿みたいに感謝してるぜ」

 ・大、布団をかぶる
大「別に俺が望んでることじゃねえよ」
賢「じゃあ望みってなんだよ?」

 ・大、布団の中でぼそぼそと話す
大「幸せになりてえ」

 ・賢、大爆笑する
賢「そんなん人殺しがどうやって? 大、弟を救いたいんだろ。だったら割り切れよ。(耳元で)仕事ってそんなもんじゃん?」

 ・大、賢の手を払う
マスター「とはいっても息抜きは必要なのは明白だ。そこの住所に行ってくるといい。私からのプレゼントだ」
 ・賢、封筒を大に渡す


⑤〇弟の病室(夕方)
 ・光(20歳)、昏睡状態でベッドで横たわっている
 ・大、ベッド横の椅子に座って光に向かって話す
大「光、お前が寝ている15年でこの世界はさらにくそになってるぞ。くそ仕事に、くそ上司にくそ世間。めんどい仕事は全部下っ端がやって、ハイハイ返事してさあ」
大M『でも家族、光とつつちゃんのためには働かなきゃいけない』
大「労働者まじきちいぞ」

⑥<回想>
〇家の庭(和の感じ)
 ・大(15歳)、ゲージに入れられているツツ(5か月)の前で正座している
 ・大の父(40歳)、近付いてくる
 ・光(5歳)、ボール遊びをしている
父「大、まだこの犬を殺せないのか?」
大「ごめんなさい。お父さん、できないです」
父「お前ももう15歳だ。この家を継がなければいけないんだ。子犬一匹くらいで物怖じしていてどうするんだ。そんなんだと立派な殺し屋にはなれない」
大「殺しなんて絶対無理です。僕は殺し屋になりたくないです。ごめんなさい」
父「お前は弱い」

 ・父、遊んでいる光を指さす
父「……あいつは大にとってどんな存在だ?」
大「大事な弟です」
父「それならあいつを殺したら、これを殺す気になれるか?」
大「どういう意味ですか……」
父「私が弱い君の背中を押してやる、と言っている」
・父、光に近付き、光は父を見ている

 ・父、大を見ながら、光(弟5歳)を殴り、光は飛んでいく
 ・父、光を殴り続ける
大「やめてください! 光はまだ5歳ですよ。そんなやったら、本当に死んじゃいます」
父「それなら犬を殺せ」
大「無理です」
父「大、生きるということは選択だ。どちらも取るなんて無理なんだ。今選べ」
大「そんなの」

 ・父、光を殴り続ける
大「やめて、やめろよ」

 ・大、頭に血が上り、近くにある盆栽の入れ物を割る
 ・大、その欠片を片手に父親に殴りかかる

〇同
 ・大(10歳)、意識がある状態で床に倒れている
 ・光(5歳)、大量に血を流して床に倒れている
光「お兄ちゃんは、僕のヒーローだ。ありがとう」
 ・大、泣きながら光に手を伸ばす

 ・マスター、(顔が見えない感じ)近付いていき、父の死体を指さす
マスター「これ、君がやったのか?」
大「(息を途絶えさせながら)光とツツちゃんを助けて。光が……」
マスター「うん、助けてあげよう。だから君も私を助けてくれるかい?」
<回想終了>
 
⑦〇光の病室
 ・大、封筒を見る
大「息抜きねえ」


⑧〇ラブホテルの前(夜中1時ごろ)
 ・大、面を食らっている 
大「そういうことか。まあたまには悪くねえな」
 ・大、中に入っていく


⑨〇部屋の中
 ・幸(22歳)、ベッドの上に座っている
幸「こんばんは」
大「(おどおどして)おう」

幸「お疲れのようですね」
 ・幸、大の着ているシャツを全開にしてから佐原の胸に手を添える
大M『おお、さっそく』

 ・大、顔を真っ赤にし体が硬直している
 ・幸、大の様子を気にもせず、恍惚とした顔で大を見つめている
幸「私があなたの不幸を食べて差し上げます」

 ・大、鼻の下が伸びている
大『極楽浄土に連れて行ってくれる的な?』

幸「いただきます」
 ・幸、大の鎖骨下に舌を這わせる

 ・大、嬉しそうにしていたが、すぐに異変に気付く
大「おい、なんだこれ?」

 ・幸、舐めながら上目遣いで話す
幸「甘くて絶品……。(野獣のように)家族のためにたくさん我慢をして、お辛い思いをしてきたのですね。でもあなたは昔とは違って世間から、仲間から称えられ感謝されています。人を殺せるようになったのに、あなたを苦しめる人はいないのに、なぜ今そんなに辛いんでしょう。あなたの幸せとは、不幸とは何ですか?」
大「……お前なんなんだ?」
 ・幸、ニッコリ笑う

 ・大、幸を突き放し部屋を出ていく


⑩〇事務所(次の日、正午ごろ)
 ・大、ツツに餌をあげている
 ・賢、パソコンの前に座っている
 ・マスター、スクリーンに顔が見えない状態で映しだされている
マスター「どうだった、私からのプレゼントは?」
賢「気に食わなかったようだぜ。こいつすぐ帰ってきて、ずっと機嫌悪い」
マスター「それは残念だ」
大「で、今回の事件は?」
マスター「ああそれだが、これからは方向性を変えようと思っている」
賢「方向性?」
マスター「今までは犯人が分かっている過去の事件を解決していた」
賢「証拠不十分で起訴できなかったり、時効になってしまった、とかでしたよね」
マスター「しかしそれもほとんど大が裁いてくれた。これからは、犯人が分かっていない過去の凶悪事件、また新たに起こった事件にも着手しようと思う」
大「……そこまで踏み入れる必要ってあるんすか?」
マスター「ある。悪は徹底的に根絶やしに、だ。世間のアンチヒーロー容認論はもっと盛り上がるだろう」
 
 ・賢、ハンドサインでお金を表す
賢「そしたら、俺たちも儲かりますね」
大「前とは違って殺しに加えて犯人探しもしなきゃなら、俺たちには無理っすよ。こいつあほだし」
 
 ・大、賢を指さす
賢「(クールに)俺は天才詐欺師だぞ。殺しだけのお前の1000倍頭はいい」
マスター「そうだ。君たち二人だけだと心もとない」

 ・賢、驚いたようなショックを受けたような表情をする
マスター「そこでだ、新たな仲間を入れることにした」
大「仲間?」
マスター「入ってくれ」

 ・幸、ドアを開けて部屋の中に入ってくる
幸「こんにちは」

 ・幸、大の胸に手を当てる
幸「幸と申します。不幸喰いです。昨日はごちそうさまでした」
大「(驚いて)なんでお前が?」

 ・幸、大にぐっと顔を近づける
幸「あなたに着いていけば、甘い不幸の蜜を食べられそうだから、です」

一話目終わり

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