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君の不幸は蜜の味2話【創作大賞 漫画原作】

本編

①〇駅前
 ・活動家、アンチヒーローについての演説をしている
 ・支援者たち、チラシを配布している
活動家「アンチヒーローは私たちを救おうといつも奮闘しています。彼こそ世の中のことを真に考えているのです。彼に正当性を」

 ・大、いきなり叫んで、周りの人が驚いてみている
大「うるせえ、アンチヒーローが好きで働いてると思ってんのか? お前たちと一緒でしょうがなく金のために働いてんだよ。大黒柱なんだよ。しょうがねえんだよ。なにがヒーローだ」
活動家「なんなの、あなた! あなたはアンチヒーローの何が分かるの!?」
大「知らねえよ。ただのくそな社畜だからな!」

 ・大、足早に去っていき、その背中を周りに見られている
幸「言いすぎじゃないです?」
大「あ”あ、言いすぎだ! ついてくんな」


②<回想>
〇事務所、部屋の中
 ・大と幸、立っていて、賢はパソコンの前で座っている
 ・マスター、大きいスクリーンに顔が見えない状態で表示されている
大「不幸喰いってなんだよ?」
マスター「彼女の主食は不幸なんだ」

 ・大、大きい声を出す
大「そんな人間いるはずねぇ」
幸「(淡々と)そうはいっても、うちの家系は代々そうなので」

 ・大、淡々とした幸にむっとする
大「とにかく俺はこいついや。変えてほしいっす」
マスター「だめだ」
大「なんでっすか?」
マスター「彼女なら事件を簡単に解決できるからだ」
大「……こいつのこと信じるんすか? 不幸を食べるとか怪しいっすよ」
幸「私のところに来た後から、すっきりしてるんじゃないですか?」

 ・大、反論できなくて黙ってしまう
幸「きっとお力になれると思います」
マスター「上手くやってくれ、大。早速だが、この事件は知ってるか?」

 ・スクリーンにA子(18歳)と彼女の部屋の様子が映し出される
賢「配信者の子が殺されたやつか」
幸「このA子ちゃんは登録者10万人の動画配信者で、ティーンの中で人気急上昇中だったとか」
大「おい、勝手に進めんな!」

マスター「証拠が見つからなく、捜査は難航している。それを君たちに解決して裁きを加えてきてほしい」

 ・大、そっぽを向く
大「警察もできないなら、俺たちじゃもっと無理っす!」
マスター「だから彼女に加わってもらったんだ。とにかく大は現場に行って、彼女と賢の指示に従えばいい」

大「(鼻で笑う)俺がこいつに従う? いやっすよ」
 ・大、マスターが写っているスクリーンに顔を近づける

マスター「大、これは仕事だ。それに彼女と働いてみれば分かるはずさ」
 ・大、ふてぶてしく幸を見る

幸「私は犯人まで辿り着けます。だからお願いしますね、大くん」
 ・賢、大の肩を触る
賢「(馬鹿にしたように)頑張れよ、大くん♡」

 ・ツツ、大から離れていく
 ・大、イライラした様子で部屋を出ていく
<回想終了>


③〇道
 ・大の少し後ろで幸が歩いている
大「お前のせいでイライラする!」
幸「大くん、それは他責思考です。カルシウムをもっと取るといいですよ」

 ・大、舌打ちをする
大「付いてくんな!」
幸「仕事なのでついていきますよ、大くん」

 ・賢、イヤホンを通して話しかける(事務所にいて二人の様子を監視している)
賢「大、そこが現場だよ。こっちでドアは開けるから」

 ・大、幸の方に振り返て手を出す
大「で、どうすればいい? お前が全部なんとかしてくれるんだろ?」
幸「下着を一着持ってきてほしいです」

大「(拍子抜けしたような感じで)は?」
幸「(淡々と)上のだけで大丈夫です。あと勝負下着じゃなくて、なるべく日常使いしてそうなやつでお願いします」
大「(焦った様子で)待て、下着? なんで? いやだ、断る!」
幸「殺しはするのに泥棒には抵抗あるんですか?」
大「ああ、当然だ! アンチヒーローじゃなくて変態下着泥棒になっちゃうからな」

賢「(噴き出しながら)幸ちゃんを信じな、大くん」
 ・イヤホンを抑えながら大きい声で話す
大「うっせえ! 俺はやんねえぞ」

幸「しょうがないですね、それなら部屋着を持ってきてください」
大「……賢、どうすればいい?」
 ・段ボールを載せたドローンが二人の元に飛んでくる
 ・通行人たち、物珍しそうにドローンを見ている
 ・賢、段ボールを開け、警察の制服と警察手帳を取り出す
賢「警官の制服着て、もし身元聞かれたらその警察手帳を見せればいい」
大「大丈夫かよ」
賢「偽装してあるから問題ない。それにいざとなったらお前なら大丈夫っしょ」

 ・大、眉間に皺を寄せる
大「なんちゃって詐欺師が」


④〇路地裏
 ・大(警察の服を着ている)、幸の方に歩いていく
幸「お疲れ様です、大くん」

 ・大、幸によれよれのTシャツを渡す
大「こんなんでなんか分かるのかよ」

・幸、唐突にTシャツを舐める
大「なにやってんだ!?」
 ・幸、目を瞑って味わっている

 ・大、イヤホンを抑える
大「おい、賢! やっぱこいつやべえぞ」

幸「犯人分かりました。こっちです」
 ・幸、大の腕を握って導く

 ・歩いている賢と幸、戸川(25歳、刑事)の横を通る
 ・戸川、二人の方を振り返り見ている


⑤〇道
 ・通行人A、B、戸川に話しかける
通行人A「戸川刑事ですか?」
戸川「はい、そうですが」

 ・通行人A,B、キャッキャと喜ぶ
通行人B「あのいつもテレビで見てます」
戸川「(笑顔ではにかんで)ありがとうございます」
通行人A「あの例の事件、私たち近所に住んでるから怖くて。でも戸川刑事が来てくださってるなら一安心です」
通行人B「応援してます! 頑張ってください」

 ・戸川、通行人Bに握手をする
戸川「はい、ありがとうございます。一生懸命頑張ります。でもここから中には入らないようにしてくださいね」
通行人A,B「「はい」」
 ・通行人A,B、キャッキャしながら去っていく

 ・近田(40歳)、戸川に近付いていく
近田「甘いマスクに25歳にして検挙率一位の頭脳。刑事、さすがの人気ですね」
戸川「いやいや、とんでもないです」
近田「街を守るためにがむしゃらに頑張っている姿が人の心を打つのでしょうね」
戸川「市民の方々がああやって僕たちを信頼してくれているんです。その期待には応えたいだけです」

 ・近田、戸川に頭を下げる
近田「その心意気、ただただ脱帽です」
 ・戸川、手を前に出して謙遜する

 ・坂山(35歳)、小走りで戸川に近付いて、スマホを見せる
坂山「刑事、これご覧になりました? あのアンチヒーローが過去の事件に加えて、直近の事件にも着手するっていう声明が出したんです」
近田「なんで?」
坂山「さあ、でも今まで捜査したことなんてないわけだし、危惧しなくてもいいと思いますよ」 

戸川「いや、用心はしておいた方がいいでしょう。アンチヒーローならやりかねない。何か目算があってのことだろうし。彼の動きにも注意していきましょう」

 
坂山「戸川刑事はぶっちゃけどう思ってます? 世間では容認論もあるし、警察内部でも、ねえ」
 ・坂山、近田に目配せをする
 ・近田、目を逸らす

戸川「(堂々とした感じで)彼のやり方は野蛮かつ短絡的。決して許されるものではないです。容認すれば、先人たちが作り上げてきた法律、制度、そして今の秩序を否定することになります。それに間違っていても自分なりの正義を掲げさえすれば何でもよいという風潮になり、世の中は混乱に陥るでしょう。だから私たち本物のヒーローが偽物のヒーローに負けてはいけないのです。絶対にその仮面を剥いで罪を償ってもらいます」

2話目終了

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