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【朗読】Summer tuning

 蝉が鳴いている。

種類までは分からないが、
きっといろんな蝉が、
夏という季節を一斉に楽しんでいる。
楽しんでいるのか、
命が尽きるまでの非情な叫びなのか。

「…暑い、溶ける」

今シーズン、もう何回言っただろうか、
このフレーズ。
一度も溶けたことないじゃん、って
蝉がバカにしているようだ。

真夏の太陽は、容赦ない。肌が沁みる。
肌の表面に刺激物を塗られて、
オーブンに入れられたような感覚。
オーブンに入れられたことないじゃん、って
また蝉がバカにしているようだ。

呼吸をすると、
体温よりも熱い空気が気管を支配する。
吐き出した呼気の方が冷たくて。
服の中で流れ続ける汗は、体よりも冷たい。

 
 こんな時、とにかく走り出したくなる。
持ってる重たいモノ、ゼーンブ放り出して。
がむしゃらに走ると頬に掠める熱風が
心地良かったりしない?
つめたかった呼気が次第に熱くなって、
テンポが上がって、
時折、立ち止まるとじわっ、ぞわっと
汗のしずくが肌に湧き出る。
呼吸を整えようとすればするほど、
心臓が大暴れして、
まるで口から鼓動の音を
奏でているような感覚になる。

――― ああ、これが夏だ。

 テンション爆上がりの鼓動がおさまらないまま、
よどんだ息を吐いて、吐き切って。
肺がしぼむ寸前まで吐き切ったら、
熱い空気が勢いよく体に飛び込んだ。
灼熱の空気を咀嚼(そしゃく)する、最高の瞬間。

――― チューニング完了。
   冬まで頼んだ、自分の体。


 蝉が鳴いている。

種類までは分からないが、
きっといろんな蝉が、
全力で、こんな自分を応援してくれている。

心地良い、夏の声。


【読んで下さるお方へ】

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自称・武士の桜吹雪(さくらふぶき)です。

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