第12話 優雅で賑やかな朝

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「おはようございます、悠様」
「…?」

ぼやける視界の中に写るのは、イケメンの柔らかい笑顔。

「…はっ!お手伝いしなきゃ!」

ガバッと起き上がれば、見慣れない景色が目の前に広がる。状況を飲み込むのに数秒。

横には、柔らかく微笑んでいるイケメン執事−小笠原さんが立っていた。

「…おはようございます」

そうだ、私はいま金持ちたちが通うルミエール学院にいる。

窓を開ければ、フワッと爽やかな風が体を包み込んだ。白いレースのカーテンがふわふわと揺れ、短い私の髪の毛を撫でる。

「はあー!」

暖かい太陽、気持ち良いそよ風。ぐーんと背伸びをすれば、目も頭も冴えてくる。

「今日も気持ち良いですね、小笠原さん!さっ、顔を洗って朝食朝食ー!」

ルンルンとスキップをしながら洗面台へ向かい、顔を洗った。小笠原さんが差し出してくれたタオルを受け取り、優しく顔を拭く。

次に、朝食が並べられているテーブルに腰掛けた。
温かいオニオンスープ、トースト、目玉焼きとベーコン、シーザーサラダ、オレンジジュース、イチゴヨーグルトが目の前に並んでいる。

「…修学旅行で朝食バイキングを食べた時以来だ…」

家では、節約のためスープとトーストしか食べてなかったから。

「いただきます!」

手を合わせて、まずはスープスプーンを手に取った。
オニオンスープをすくい、口の中に運ぶ。コンソメと甘い玉ねぎの香りがふわっと抜けた。

「…小笠原さんって、料理上手なんですね!羨ましいです」
「ありがたきお言葉。光栄です」

優雅な朝食を堪能し、ハンガーにかけられている制服を手に取る。

「では、お着替えのお手伝いをさせて頂きます」

やけに嬉しそうな顔をしている小笠原さん。ニコッと微笑む姿は綺麗なのに下心が見え見え。

「いえ、着替えは自分で…」
「あーあ、学院に連絡しないとダメかなー」

これはずるい。ってか、嫁入り前なのに男の人に肌を見せるだなんて…!

「…分かりました。では、跪いて目をつぶってください」

私の言う通りにした小笠原さん。ハンガーにかかっていたネクタイを小笠原さんの目に巻いた。

「めっ、目隠しは絶対に取っちゃダメですからね!」
「かしこまりました」

小笠原さんに背を向け、部屋着から制服へ着替える。ワイシャツに袖を通し、グレーストライプのスラックスを身に着けた。

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