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ラブホテルの対義語は海

一人で出張をしていた。旅行があんまり得意でない私には遠出する機会がなかなかないので、その日は一人でもその土地の有名なラブホテルに泊まろうと思っていた。

でも、本当は一人よりも二人でラブホテルは行きたいから、誰か一緒に行ってくれる人がいないか探していたら、たまたま同じ土地に知り合いの人がいたので白羽の矢を当てた。

高身長イケメンがっしり系スポーツマン高学歴理系卒。表面的な情報も悪くないし、まず飲みに誘ってみた。話している所感としてもまともそうなのと、私への好感度も悪くなさそうという手応えもあったので、この人となら一緒に泊まってもいいかなと思え、ラブホテルに誘ってみたら普通に断られた。なので結局その日は1人でラブホテルに泊まった。しかし話はここで終わりではなかった。

心変わりでもしたのだろうか。東京に帰ってきてからデートしようということで呼び出された。「〇〇時に〇〇駅で」という情報だけ言い渡された。自分からラブホテルに誘っておいて、相手からの誘いを断れるはずもなく、ここまできたら一回くらいはホテルに行こう、そうしたらなんか楽しいことあるかも、という軽い気持ちで行くことにした。

ラブホテルに行くつもりでミニスカにストッキングとヒールの格好で向かった私は、「今から鎌倉に行きます」と言われるがままになぜか海に連れて行かれた。しかも、ストッキングとヒールを脱いで裸足で砂浜でビーチボールまでやらされた。ビーチボールをやりながら私は「鎌倉の海でビーチボールをするなんてラブホテルに行くことの真反対だ!!」と心の中で叫んでいた。

そしてその後、海に沈む夕陽が見えるオシャれカフェでオシャれハンバーガーを食べているときに、説教されることとなる。

「付き合う前にやっちゃったらセフレになっちゃうよ」

そんなこと考えたことがなかったから、というか巷には聞いたことがあるフレーズだけど、自分の人生とは無縁だと思っていた言葉を言われて面白くなってしまった。

色々疑問点はある。まず、この発言がなされるということは前提として私はセフレじゃなくてあなたと交際したいと思っているということになるけれど、私はラブホテルに誘っただけで好きだとは一言も言っていないし、付き合いたいとも言っていない。それは本心のままなので巷でいうセフレでも全然いい。というかセフレという、好きでもないのに長期的にセックスする関係になれるほど体の相性がいいのならそんなに素晴らしいことはない。次に、因果関係もわからない。なぜ付き合う前にやったらセフレになるのだろうか。本当に分からなさすぎる。

「もっと君とたくさん話したいし、散歩したいし、魂でぶつかりたい。恋愛ごっこはしたくない」

恋愛ごっこはしたくないけれど、いきなり呼び出したかと思えばサプライズで鎌倉の海に連れていくんだ。しかもビーチボールまで用意して……。マカロニえんぴつみたいな人だな。自分では聞いたことないけど、知り合いの高校生の男の子が歌っていて、あまりにも一つ一つの言葉に共感できなさすぎてとても印象に残っている。

からだは関係ないほどの心の関係
言葉が邪魔になるほどの心の関係

会いたいとかね、そばに居たいとかね、守りたいとか
そんなんじゃなくて ただ僕より先に死なないでほしい
そんなんでもなくて、ああ、やめときゃよかったな
「何でもないよ」なんでもないよ、

マカロニえんぴつ『なんでもないよ、』

でもこの話を高校同期の女の子の友達に話したら、「良い人だね、男の人にもそういう人いるってわかって嬉しい」と言っていたので私が何かを間違っているのかもしれないとこのときから薄々感じていた。

その日は結局ラブホテルには行けず、帰りに告白だけされた。付き合いたいと言われたけれど、それは出来ないと思ったので、付き合わないけどいつでも遊ぶよと返事をした。

後日、また遊びに誘われた。なんか公園を散歩しようということだった。一通り公園を散歩してご飯を食べていたら、「近くのスーパー銭湯にいろんな種類のサウナがあってお気に入りだから一緒に行きたい」と言われた。私は特にサウナに心惹かれはしないし、男女2人でスーパー銭湯に行けば結局1人きりになるので、なぜ2人で行く必要があるのが疑問すぎて、約10回は行きたくないと粘ったのに、相手のしつこさに負けていくことになった。スーパー銭湯には罪がないので、1人で楽しんだけれども。彼と出かけるのは全く楽しくないわけではないけれど、こんな高頻度で遊ぶほどでもないと思ってしまうと、もうただ面倒くさいだけで、ああ私はこの人に恋はできないなと思った。

その日はラブホテルに行けた。

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