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その強さの謎

うーん?
何やら唸っている未来に
「どうした?」
「どうかしましたか?」
射士郎と錠が問いかける。
「 シャーシロはそれなりに訓練積んでるのよね。
錠くんは警察官だし」
当然だと頷く射士郎に、柔道も射撃も警棒の取扱いも鍛錬あるのみですと錠が応じる。
「2人が強いのは判り易いんだけどね、あの2人は何なのかなぁって」
指差す方には、向かい合って何やら会話している大也と玄蕃がいる。
「変身したら強いのは、スーツのおかげかなと、私も強くなってるからそう思うんだけど」
「大也さんも玄蕃さんも、素で戦い慣れてる感じがしますね」
錠の言葉に、未来はそれなのよと身を乗り出す。
「なんで?」
「何故ですか?シロ先輩」
「俺に聞くな」


「どうしてかって?
私、それなりに場数は踏んでるからねぇ」
玄蕃は飴をクルクルと回しながら言う。
「調達依頼してくる側に、真っ当でない輩もそれなりにいてね、そういう依頼はお断りなんだけど、まあ力づくで何とかしようとしてくるのもいるからねぇ」
暗に修羅場は経験済みと笑ってみせる。
「大也も巻き込んだこともあるよ」
横で話を聞いていた大也が頷く。
「あったなぁ、そういえば。
玄蕃と一緒の時が2回。
俺単独で1回、合計で3回」
「大也、単独での話は聞いてないよ」
「言ってなかったか?
まあ今言ったから、いいじゃないか」
玄蕃の追求を大也は軽くかわす。
「どうして大也が巻き込まれるの?」
未来が首を傾げる。
「俺が玄蕃の弱点に見えたらしい」
「私のトラブルには関係ないから、庇ってたのが拙かったみたいでね。
客にしては、大也とは距離が近かったからねぇ」
大也は悠然と笑い、玄蕃は少し申し訳なさそうではあった。
「距離が近いって?」
「連れ出して、一緒にサッカーしてたからねぇ。
大也はなかなか上手いから、サッカー」
「玄蕃のほうが凄いだろう」
サッカー!そういえば、この2人は蹴り技を多用する気がする。
未来は答えを見つけた気がした。
「ポジションは何だ?」
射士郎が質問する。
「玄蕃はFWで俺がMF」
大也が答えた。
「攻撃的か守備的かどっちだ?」
「大也は攻撃的MFだよ」
玄蕃が答える。
「FWとMFって、何?」
「FWは相手ゴール前に攻め込んでシュートを打つ。
MFは攻撃の起点、司令塔とも言う。攻撃的MFはFWと同じく相手ゴール前に攻め込むこともある」
射士郎が説明する。
「ゲームでいうところの、前衛だな、俺も玄蕃も」
大也が和かに言う。

大也と玄蕃が先陣を切る。
射士郎は後方から銃撃で支援。
戦闘開始はこのパターンが多い。


「じゃあ、体術の訓練とかは経験ないのね?」
未来の問いに、玄蕃は頷く。
「私は無いね」
大也は顎に手を持っていって考える素振り。
「護身術ならあるぞ」
キョトンとなった未来に、やって見せたほうが早いかと大也は動いて、錠を手招きした。
「防犯教室などで指導するんですが」
錠はそう言いながら、向き合ったり背後からだったりで大也の腕を掴む。
それを素早く振り解いて、大也はさっと距離を取る。
「大也さん、お手本になりますね、素晴らしいです」
錠が出来栄えを賞賛した。


「サッカーの他にスポーツ経験は?」
「テニス。
そこそこ良い線までいってた。機械いじりの時間が取れなくなるから辞めたが」
大也の答えに、何故か射士郎と玄蕃が納得したと揃って頷いた。
「ハンドルロッドが得意なわけだ」
「そういう基礎が出来てるからなんだねぇ」


「でもね、何か上手く誤魔化された気がするのよね」
未来の疑問は完全に解消したわけではなかったようだ。

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