21-22のウルヴズ。失意のシーズンか?それとも?

ウルヴズの21-22シーズンが終わりました。
開幕3連敗から始まり厳しいシーズンになるかと思いきや、第26節終了時点ではヨーロッパ大会も見えた8位につけ期待も高まる中、第32節から第38節は2分6敗(5得点16失点)を喫しまさかの10位フィニッシュ。守備面では一時期は「堅守」と評価されたもののシーズンの終盤では崩れていき、攻撃面ではシーズン通して得点力不足にあえぎ、得点数はリーグ17位(ワースト4位で降格圏のチームに次ぐ少なさ)を記録。

振り返ってみると厳しいシーズンだったように思えますが、落ち着いてシーズンを簡単なデータと共に振り返ると、悲観するようなシーズンではなく、むしろ健闘したともいえるシーズンであったと思います。

今季の振り返りをしていきたいと思います。

目次

  1. 結果(21-22)

  2. 選手成績

  3. 選手、監督評価(主観)

  4. 振り返り

 1. 結果(21-22)

プレミアリーグ
順位-10位
勝ち点51(15勝6分17敗)
得点38(17位)失点(5位)得失点差-5

FAカップ
ベスト32

カラバオカップ
ベスト32

 2. 選手成績

選手成績

上記のデータは「https://www.transfermarkt.com
」より引用

play time(m)=出場時間
in squad=スタメン+ベンチ入りの数の合計
partici.=出場試合数
ppg=1試合あたり勝ち点貢献数

 3. 選手、監督の評価(主観)

[GK] jose sa 10 / john ruddy 7
[CB] conor coady 6 / max kilman 7 / romain saiss 5 / willy boly 5 / yerson mosqura - / toti 6
[RWB] nelson semedo 6 / jonny otto 7 / ki-jana hoever 4
[LWB] rayan ait-nouri 6 / marcal 5
[CM] ruben neves 9 / leander dendoncker 6 / joao moutinho 7 / luke cundle 7 / chem campbell -
[WG] Pedro neto 7 / adama traore 6 / daniel podence 7 / francisco trincao 6 / hee-chan hwang 6 / chiquinho 8
[CF] raul jimenez 6 / fabio silva 5
[manager] bruno lage 6

 4. 振り返り

シーズンを振り返る際に、どのような視点から振り返っていくのが効果的かはわからなかったので、今回の記事では、
1. 編成
2. 監督
3. チーム全体
に分けて順番に振り返っていきたいと思います。

また、目標設定によって結果の良否が変わってくることは振り返りにおいては非常に重要なことです。ELを目標にして戦っていたが10位で終わってしまったなら、失意のシーズンと纏めるのが妥当でしょうし、そもそもヨーロッパのコンペを目標にはしておらず、2桁前半フィニッシュを目標としていたとなら、10位という結果は素晴らしい結果といえるでしょう。

今季のウルヴズがどこを目標に設定していたかは、内部の人間ではないので残念ながら分かりませんが、ブルーノラージ監督のシーズン終了後の発言では「もし今季私たちが稼いだ勝ち点でトップ10入りしていたら、それは素晴らしいシーズンだったと言う必要がある。」と、プラスの発言をしています。

もちろん監督の公の場での発言が真意ではないことが多いのは頭の片隅に置いておかなければいけませんが、メディアを通じる以上監督の真意を把握するのは困難なので、ここではラージにとって今季の結果はプラスであったと纏めておきましょう。

また、チームの補強額と順位が直結するわけではありませんが、チームの補強を財政的な側面から司る経営陣は、基本的には補強(投資)をしてより多くのリターンが回収できることを考えているはずですから、補強額が大きいほどチームの結果に期待していると言って差し支えないと思います。

しかし今季のウルヴズは、昨季13位と、その前シーズン、前々シーズンの7位をから大きく後退する位置に退がったにもかかわらず、今季の支出額(=補強額)はリーグ19位(リーグ20位はブレントフォード)の€37.60mと、非常に消極的な補強に終わっています。

このことからも、ウルブズの目標設定としてはヨーロッパのコンペは見据えていなかったと考える方が妥当だと思います。

従って、これから先はヨーロッパのコンペは見据えておらず、むしろ10位は健闘であった、という前提で話を進めていきたいと思います。

1. 編成

今季のウルヴズは、主に3-4-3(守備時5-4-1)と3-5-2(守備時5-3-2)のフォーメーションを用いて戦っていました(3-4-3で31試合、3-5-2で11試合)。

チーム構成で考えなければいけないのは、目標に対しての選手の量と質です。質については、上記の目標設定の考察と今季の結果を踏まえると十分であったと考えられるので、ここでは量について考えます。必要な各ポジションの最低枚数は、GK2枚、3CBに対して5枚、両WBで合計4枚、2CM(3CM)に対して4or5枚、両WG合わせて4枚、CFは2or3枚、合計で21or22枚です。

GK、CB、両WB、両WG、CFに関しては上の選手成績の図からもわかるように頭数は足りていたと考えられます。

問題は2CMです。カンドルとキャンベルは、共に今季プレミアリーグデビュー(カンドルは第22節、キャンベルは第32節)を果たした下部組織上がりの若手であり、おそらく元々ラージの当初のスカッド入りはしていなかったでしょう。またキャンベルはCMというよりはCAM、WGのキャラクターが強そうでした。

そう考えると、3-4-3でも枚数が足りていないにもかかわらず、3-5-2では必要な3CMに対して、35歳の大ベテランを含んだ3枚しかいないということになります。

ただでさえ、3-5-2の場合はコートの横幅を3枚でスライドし続けるという膨大な運動量が求められる3CMが42試合もの試合を担当するのを任せるのは無責任にもほどがあります。

幸い3枚の中盤が大きな離脱もなく合計で8,421mの出場時間をこなしてくれました。ちなみに、3-4-3が31試合、3-5-2が11試合あった場合に必要な中盤の出場時間は8,550mであり、キャンベルは出場した12分間は右WGを担当したので除外し、カンドルの出場時間(185m)を加えると8,606mであり、如何にギリギリの戦いをしていたか、また中盤3枚が出場時間に関して素晴らしい仕事を遂行してくれたかがわかると思います。

同時に、チーム編成の無謀さに腹が立ちますね。これは後の補強ポイントにも繋がってきますが、もちろん戦力整理の優先順位として最上位に上がるでしょう。

2. 監督

ブルーノラージは18-19シーズンの1月から途中就任する形でベンフィカの監督に就き、29試合(23勝2分4敗、勝率79%)でトップチームの監督就任は初めてでありながら優勝に導くという素晴らしい実績を残しました。

若手を重用しながら4-4-2で攻撃的なフットボールを展開するという評判を残しており、そんな素晴らしい監督が2シーズンどのチームに引き抜かれることもなくフリーだったというのは不思議で堪りませんが、そんな監督がプレミアリーグでいきなり開幕から指揮を取ることになります。

補強も乏しく、前監督のヌーノが築いた財産をもとに戦った初のプレミアリーグの舞台での初のフルシーズン。結果は10位とそこそこの成績を残しましたが、内容、戦術面においては決して良かったと言えるものではありませんでした。

内容が素晴らしい、言い換えればビルドアップが整備されている、守備組織が整備されている、にもかかわらず得点が少ない、失点が多いとなれば選手のパフォーマンスに責任の所在をなすりつけることもできますが、シーズンを通して得点/失点期待値が低いとなると、監督の責任が少なくないと捉えることができます。

「https://footystats.org/jp/england/premier-league/xg」より引用

上記のデータを見ていきましょう。

青色の部分の5列は、左から順に
exp.→得点期待値をもとにした想定順位
club→クラブ名
xG→得点期待値
exp.→得点期待値をもとに算出された予想得点数
sco.→実際得点数

これを見ると、恐ろしいことにウルヴズの得点期待値は降格圏である18位に位置しています。得点期待値が低い理由は、監督の戦術面での策不足もしくは、純粋に選手のパフォーマンス不足といえますが、降格圏にいるようなメンバーではないので、監督による策不足の意味合いが強いのではないか、と個人的には思います。

次に、緑色の部分に5列は、左から順に
exp.→失点期待値をもとにした想定順位
club→クラブ名
xGA→失点期待値
exp.→失点期待値をもとに算出された予想失点数
con.→実際失点数

これを見ると、予想失点数は63にもかかわらず実際は失点数は43と、差がなぜ生じたかは明確には分かりませんが、監督の守備面での整備が優れていたとは到底言えない結果と考えられます。

皆さんの記憶にも新しい、ジョゼサーのセーブ率等のデータを引っ張ってくれば、この辺の差が少しは明らかになると思いますが、今回は面倒臭いので割愛させていただきます。

参考までに、赤色の列は、実際の順位、得点数、失点数となっています。

xGをもとにした予想勝ち点数では17位というデータもありますし、なかなか結果に反して厳しい内容が多かったのは私自身もフルシーズンを見て感じましたし、ウルヴズファンの皆さんもそう感じたことでしょう。

3. チーム全体

チーム全体を振り返りましょう。結果は10位でしたが、今季は主力の離脱や、エースの復帰シーズン、監督交代のシーズンと、条件的には難しいものがあったと思います。

私としては、3-4-3を採用する場合のフォーメションは現戦力では下の図が最適と考えています。

右WBとCFと右WGは議論の余地がありそうですが、今回はそこは置いておきます。ここで言及したいのは左WGであるネトの存在です。

本来の実力なら、シーズンで可能な限り出場時間を稼ぎチームの勝ち点に貢献するはずのネトですが、昨季の大怪我の影響もあり、今季は463mとおよそ5試合分しか出場できませんでした。また、ネトほどは、セメドとの勝ち点における差別化には繋がりませんが、ジョニーも1,023mの出場時間と厳しいです。

ベストメンバーが揃わなかったことに加え、エースであるヒメネスも本来の実力発揮とはお世辞にもいえず、エースとしての復活とは程遠い内容と結果でした。


また、監督交代のシーズンとも重なりました。ポルトガル国内では3強の一角として数えられるほど国内で考えれば強力な戦力を保持しているベンフィカに対して、昨季は13位に終わりながらも新戦力の補強も消極的であったウルヴズ。


改めてになりますが、このような難しい条件の中で10位は、健闘したと選手と監督、スタッフを讃えるべきでしょう。

こうして振り返ってみると、10位は全くもって悪い結果ではなく、どちらかといえば成功とも言えるシーズンであったと思います。

ただ、先述したような厳しい条件下でもこの成績を残せるチームですから、来季は期待するファンも多いと思います。私ももちろんその一人です。

次の記事では、今季明らかになったチームの改善すべき点を中心に、戦術面での修正や、補強ポイントの炙り出しを行い、来季の輝かしい展望を希望的観測を大いに含めながら語っていこうと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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