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衝撃的な事件が発覚しました。ALSの患者さんを死亡させたとして、医師2人が嘱託殺人罪の容疑で逮捕されたのです。事件について「安楽死」と表現するメディアがほとんどです。しかし、それは誤解を招く表現で、医師による「殺人」に他なりません。
事件をスクープした京都新聞の記事によれば、「医師2人は被害女性の担当医ではなく、直接の面識はなかった」とのこと。この点で、医師による従来の「安楽死」事件とは、様相が大きく異なります。現段階で十分な情報がないため予断は避けるべきですが…余罪がないことを祈ります。
患者さんの苦痛に対する共感から、「安楽死」ばかりか事件に肯定的な言説がネット上には散見されます。しかし、良い「殺人」なんてあり得るのでしょうか?もちろん、死を強く望んだ患者さんの気持ちはボクも理解します。しかし、彼女が苦痛の中で生きる道はあったはずで、医師がめざすべきは「殺す」ことではないはずです。
また、ボクを含めて社会は彼女が「生きる」選択ができるよう、何かできることはなかったのか…安易に「安楽死」や事件を肯定するのではなく、自分事としてしっかり考えたいと思います。
事件の一因かもしれませんが、医学部受験生の答案には安易に「安楽死」を肯定する例が昔から少なくありません。志望理由として「人の命を救いたい」と明言する彼・彼女が、実にあっさりと人を「殺す」ことを肯定する姿に、強い違和感を抱いてきました。そんな受験生の風潮に、強い危惧を抱いたと思われる医学部・小論文の出題例を以下に紹介します。
最後の一文「まず患者が、家族の介護負担や療養先がないなどの理由で、『生』を選択できない現状を解決することが先決であろう」は、今回の事件を考える上でも忘れてはならない視点です。「安楽死」や「尊厳死」などの「死ぬ権利」を保障する前に、まずは苦痛の中にある患者さんの「生きる権利」を保障すべきです。
医学部受験生がある状態にある患者さんを「殺す」ことや「死なせる」ことに肯定的どころか、積極的であることに危惧を抱いた医学部・小論文は他にもあります。札幌医科大学医学部には、以下のような書き出しの課題文を読んだ上で、尊厳死にかかわる内容説明とそれを踏まえた見解論述を求める出題例(2008年推薦入試)があります。
これも、「死ぬ権利ではなく生きる権利を」という視点に基づく出題です。二つの大学に共通するのは、以下のような医学部受験生に対する鋭い問いかけです。あなたは、どう答えますか?
もちろん、こうした問いは医師だけではなく、ボクを含めた一人ひとりの人間に対する問いかけでもあります。
<参考リンク>
東海大学病院安楽死事件・横浜地裁判決(1992年3月28日)
川崎協同病院事件
川崎協同病院「気管チューブ抜去・薬剤投与死亡事件」への声明(2010年10月)
川崎協同病院安楽死事件・最高裁判決(2007年2月28日)
iPS使い薬発見、ALSに効果確認 慶大治験(朝日新聞2023年6月8日)
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