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大人の家族旅行は心配が絶えない。

11月の3連休最終日、高速道路は大渋滞。
わたしは「大人の家族旅行」の帰り道だった。

子どもの頃は、夏休みに新潟の海にキャンプへ行くのが定例行事だった。
実家の古いアルバムには、若者のようなちょっとイケてる父と、今はベリーショートだが当時ロングヘアーの母、そして無邪気な子どもたちが砂浜で遊ぶ写真が並んでいるのを、見たことがある。

覚えているのは、暗いキャンプ場で米をとぐ手伝いをしたこと、飯ごうで米を炊いたこと。犬のコロが海で泳いだこと。ヨチヨチの弟が火傷をしたこと。そして日本海の色。それくらいかもしれない。

また旅行をするようになったのは、ここ4年くらいだろうか。ちょっとイケてた親はもう60を超え、子どもは皆30を超えた。ヨチヨチだった弟は仕事が忙しくなり、「大人の家族旅行」にはいつも参加できない。

旅行先のチョイスは、父。今回は山梨にある、岩盤浴付きの温泉宿がメインだ。

岩盤浴。
それはそれは恐ろしいほどの汗が出た。
サウナより低い、室温45度。それでも汗が吹き出し始めるのに5分。そしてもう止まらない。10分で休憩、水素水を飲み、また岩盤浴へ‥というループを2〜3回繰り返す。
これが本当に気持ちいい。
普段運動をしないデスクワークの日々で、疲れていた目もスッキリ、ちょっと目が大きくなったように見えるよ。

でもふと気付いた。親のことが常に心配だという自分の心に。
もちろん岩盤浴は健康効果がとても高いんだけど、うちの両親はフラフラしたりしないだろうか。
そして2回ループでギブアップの私と別れ、3回目のループに入った父のことも、心配だ。
スタッフさんに「父をお願いします」なんて言ってしまうお節介ぶり。

夜中や早朝に、自由に温泉に入りに行くあたりも心配だ。
なんでこんなに自由なの?まぁ、私の親だしそりゃそうか。
‥なんでうちの家族、こんなに自由なの?

温泉へ行って1時間近く戻ってこないけど無事だろうか。真っ裸で倒れてやしないか。見にいこうか‥年寄り扱いするなと、怒られるだろうか‥。あっ帰ってきた!なんて一人相撲が止まらない。
ちょっと階段があると、足腰も心配だ。

そんな心配も無事に過ぎてしまえば、いつものひとり旅とはまた違う「旅の味」だ。
ハーブ園やダムに行き、みんなで歩く。私は少し下がって、その写真を撮る。

お寺に寄れば、歴史を流暢に語る父と母。車内では最近の政治の話も始まる。無知の私が質問すると何でも返ってくる、そんな博学な両親だ。

後ろ姿を撮っては、ちょっとウルッとする。
日本海で遊んでいた姿から、みんな変わった。
親は年をとり、重ねてきた知識は決して敵うことはなく、子はそれを学びながらも、年老いてきた親を口うるさいまでに心配する。

「子ども時代の家族旅行」と「大人の家族旅行」は、立場が逆転している部分があるのかもしれない。
山ほどの心配をかかえながらも、わけわからん子ども3人も連れて、埼玉から新潟まで車を走らせ、海を見せてくれていたのだと気づく。

今度は私が心配するのだって、悪くない。
そして、危険なことをする必要はないけれど、起きるかもわからないリスクに怯えすぎて、これからする経験を恐れる必要もないんだ。

30歳を過ぎてわかる、新しい旅の味。
大きな旅も、身近な旅も、アンテナ張って見てみれば、どちらも人生を映してるのかもしれない。
また行けたらいいなぁ。近くでいいから。

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