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ショートショート|泉に恋して

泉に一滴の水が落ちた。

小さな円が広がって、
やがて泉を満たしていった。

それは雲のしわざだった。

泉に雲が恋をして、
雲は一滴の水を垂らしたのだ。

どうかぼくに気づいてほしい。
ぼくは空を漂ってるよ。

小さな一滴が泉に落ちて
それは泉を満たしていく。

小さな円が大きく広がり
眠っていた泉が蘇る。

そこから美しい女性が現れ
やがて夜が訪れた。

女性は長い髪を揺らしながら
なめらかに体を動かした。

指先まで美しいその人は
ときどき空を見上げては
漂う小さな雲を見た。

あの一滴を降らせたのはあなたでしょ。
あなたであってと私は思うの。

その人は雲を想いながら
そうしてしばらく踊り続け

一滴の水が泉に落ちると
それはやがて泉を満たした。

泉から女性が現れると
その女性は再び踊りを始める。

指先まで美しいその人は
長い髪を揺らしながら
今日も雲を想っているのだ。

私はあなたのことが好きなの。
あなたもそうであってくれないかしら。

雲からはまた一滴が放たれた。
それは泉にだけ注がれる。

泉以外に雲には興味がないのだ。
泉だけを雲は愛していた。


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