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山にのぼったんだよ。 そしたらね、月が大きく出ていたんだ。 あの月は、僕がそこにいることを知っているような風だった。 じーっと僕のことを見ているんだ。 「やっと来たのか。久しぶりじゃないか。」 と言わんばかりにね。 僕はそこで腰を下ろしてみたよ。 大きな月がそこにあるんだ。 そこを通り過ぎるわけにはいかないだろう。 ぼーっとその月を見ていたらね、少しずつ声が聞こえてきたんだ。 あれは多分、月の声だと思うよ。 「僕のことをじっと見ているのは今、君だけだよ」
茂みの中に入ると、そこに潜んでいた鳥たちが一斉に空へと飛び立ちました。 バタバタバタ、バタバタバタ。 空は青くて、雲は白い。 風が吹いている方向に、白い雲は流れていきます。 風があまりに気持ちよかったから、ふたりはそこに横たわりました。 「あの雲の中にはね、お城があるんだよ。」 トシくんは、そう言いました。 トシくんはまた変なことを言っている。 犬のハチは一応雲を眺めながら、そんな風に思いました。 それよりも、トシくんのポケットに入っているはずのお菓子の方が