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第41話≪カナデの章⑩≫【piero/mascot/crown】―‘第二のカナデ’の預言と虚しき‘干し草'狂想曲ー

—肉なるものは皆、草に等しい。永らえても、すべては野の花のようなもの。草は枯れ、花はしぼむ。主の風がしぼむ。               
(『イザヤ書』より)  

—この世は干し草山だ。誰でもそこから、得られるだけ引っ張る。
                     (オランダの諺より)

—ひさかたの 天(あま)の川原(かはら)に
  ぬえ鳥(どり)の うらなけましつ すべなきまでに
『(ひさかたの)天の川原に (ぬえ鳥の)心から嘆いておられた どうにもならない程に』
              (『万葉集』巻10・一九九七 作者不明)


「人とは愚かし生き物よ。わたくしが『輪』(和)を以(も)って尊しと叫んでも此の世という浮世(うきよ)は同じ歴史を繰り返す。わたくしの力をあなたに授ければ此の浮世の破滅時に、この地球(ほし)を‘地震'で破壊し、また無(null)から天地創造するのです」

‘持統天皇'の化身と名乗るツキという謎の女はカナデの額に接吻した後、またしても謎めいた言葉をループする。

カナデは月経痛が止まると同時にツキの透き通るような両目に映しだす自分の姿を全方位鏡に囲まれた閉ざされた幾人ものの自分が見つめ合う、不思議の国のアリスのように抜け出せられない玩具箱(おもちゃばこ)の中の世界から覗き込むように見る。

「12周期…そう一年は12のツキからなる。一回りという輪廻という大車輪も12干支という12で回り、時計という時空も12宮環から。あなたは12年後、どんなあなたになりたいかしら?」

ツキはそういいながら硬直するカナデの胸元に両手を滑らす。
カナデははっとして反射的にのけぞる。「ひっ‼触らないで‼」

この理解に苦しむ現状は真のものなのか、移ろいの中融解してゆく蜉蝣(かげろう)の夢なのだろうか。でもカナデはツキに触れられたりした体中に植えつけらえれた感覚が電流のように脊髄を昇って脳にサイン(sin)波を送る。

普通、将来の設計図を組む時、ヒトは10年サイクルで考えを構築する。

12年後。今私は13歳だ。まるで、12年後、私が成長した時に産声を上げてくるもの幾億の生命の中、輪廻の大車輪を巡って無限の奇跡の柔らかい真っ白の羽に包まれてこの地球(ほし)に流れ着くものを想起させられる。と同時に私よりも12歳歳が上の人間で自分の後ろ姿のような、そんな『第二の私』がこの地球(ほし)がどこかにいるかも知れない。

「十六夜(いざよい)。今日は良い満月があなたの身体に月光という囁きを投げかけるでしょう」

そうすると、ツキは両目の瞼をゆっくり閉じ、美しい長い睫毛を揺らしながら目をゆっくり開くと、ツキの周りには、北の方角に亀と蛇がのキメラである玄武(げんぶ)、東の方角には太陽像【陽】と青龍(せいりゅう)、西の方角には満月の像【陰】と白虎(びゃっこ)が雄雄と現れ、その円周軌道には頭は12干支の動物の人間の四肢をもつ12星座の神の使徒が立ち並び、ツキとカナデ、朱雀を囲む。

「平城宮の南に朱雀門という朱色の大きな結界の一つがあるのは、あなたもよく知っているでしょう。あなたが創したSSSではなく、この浮世には実はどこかに玄武門、白虎門、青龍門があります。考古学者は未だ見つけられていないけれでも、あなたならばその遺跡を発掘でき、巨大な結界を張る事で、この地球(ほし)が‘干し草'という人間の愚行と汚れた強欲の波で大火災が起こるとき、あなたはこの地球(ほし)を破壊してまた、天地創造するのです。その時、『第二のあなた』のもつ『輪』が世界に平和の鐘を鳴らすでしょう。百塔の都へ、帰還するのです。」 

するとゴぉっ天空まで突き抜ける月光のトンネルというダクトを通って第一層の3世界のうちの神神の世界へとツキ、飛鳥4神のうち朱雀以外の3神、12星座であり12干支の獣頭人身の者たちは第二層の人間世界から去っていった。

カナデはその神神が去るのを見送ると、緊張の糸が一気にプツリときれ、朱雀の温かい燃えるような美しい翼に包まれるようにして意識を失ってしまってゆく。

干し草はヒエロニムス・ボスの独創の世界では「虚しいもの」、「無価値なもの」の意味である。
楽園から追放された人間たちは、干し草の生業(なりわい)である前に死刑以外の方法で更生の余地があるのならば、何歳からでも生まれ変われる生き物であり、その可能性の芽すら無残に踏みにじる愚か者は怪物化し、然るべき地獄へと堕ち行き、犯した罪を償う為この宇宙が存在するまで業に入るものは業に従え…

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