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『インヴェンションとシンフォニア』 ⑴


J.S.バッハ作曲『インヴェンションとシンフォニア』全30曲は、ピアニストが必ず勉強する曲集の1つです。

すぐれた音楽作品であるにもかかわらず、「子どもの学習教材」との扱われ方をしているため、コンサートなどで弾かれる機会はほぼありません…


この曲集を大人になってから見直してみると、以前はわけもわからず弾いていたという事実を改めて実感し、構成や表現方法などをもっと勉強してみたいと思いました。

ということで、今回の参考文献はこちらです。
(この記事ではおもにP80〜P90をまとめました。)



【この記事のまとめ】

①練習用の楽譜は原典版を使い、指導者とともにアーティキュレーションやデュナーミクを自分で研究しましょう。

前書きを読み、バッハの意図した、この曲集を練習する目的を理解しましょう。

③『インヴェンションとシンフォニア』を中世から古典派への一段階と考え、ポリフォニーでなくむしろ和声に重きをおいて、分析・演奏しましょう。 



楽譜は原典版を使おう

学習用の楽譜は、できるだけ原典版を用いましょう。

原典版…ロマン派流のアーティュキュレーションやデュナーミクを取り除き、作品が書かれたその時代に出版された楽譜に忠実な姿を再現しているとされる楽譜。

ベーレンライター、ヘンレ、ウィーン原典版などが有名。


学習者自身の感情、知識や研究を総合させ、
キャラクター、アーティキュレーション、フレージング、テンポ、指使いの組み合わせを考えましょう。

学習者の年齢、演奏経験、表現能力の違いによって、個々にふさわしい課題が異なってくるため、
指導者と相談して独自のプログラムを決めましょう。




最初に前書きを読んでみよう

原典版の楽譜を開くと、解説とともに「前書き」が記されています。

前書きにはバッハが意図した、この曲集を勉強する目的が明確に示されています。

「鍵盤楽器の愛好家ことに学習熱心な者が、

2声部をきれいに演奏することを学ぶだけでなく、さらに上達したら

3声部を正確に、そしてうまく処理し、

同時によい楽想(Invention)を身につけるにとどまらず、
それを巧みに展開することの実践。


そして何よりもカンタービレ風奏法を習得し、

それと共に作曲の感覚(予備知識)を得るためのはっきりした方法を示す正確な手引き」
(K.ソアレス氏による訳)


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練習の課題いろいろ

『インヴェンションとシンフォニア』は、バッハの意図した目的をこえて、現代では以下のような練習にも使えます。

タッチの技術
・5指の基本的な形と腕の位置たもって、均一のタッチで打鍵する練習。
・手首の移動と高さの変化により、きれいなフレーズを作る練習。


((インヴェンション第1番・第4番・第8番を使った、タッチの技術についての記事はこちらです。))


様々な進行
同時進行、平行進行、逆進行、交差進行

調号4つ以内の調における黒鍵の使用

表現力

さまざまなキャラクターの曲を、色々なリズム、拍子、調性、テンポ、アーティキュレーションで弾く練習。

特に、ひとつの曲を色々なテンポで弾き、
その速さにふさわしいアーティキュレーションを考えることは、表現力を磨く良い練習になります。




和声と終止が重要

『インヴェンションとシンフォニア』では対位法だけでなく、
和声法を意識し、調性や終止にこだわりましょう。

中世の対位法形式をへて、古典の和声法式へと導いていくバッハの音楽には、
対位法と和声法の両方のエッセンスが混ざっているからです。


((はじめて読んだときはかなり衝撃的でした😱
一般的には、バッハ=対位法というイメージが強いからです…。))


フレージングや強弱、曲のキャラクターを決めるためには、
まず終止の仕方をよく聴き、正しいアクセントをつけることから始めます。




全30曲の構成上の特徴

曲の形式は、ほとんどが3部形式です。

3部形式…A-B-A


「インヴェンション」では8度、
「シンフォニア」では5度のイミテーションがよく使われます。

イミテーション…旋律の模倣


「シンフォニア」だけの特徴としては、
フーガの構成を持ちつつ、
冒頭のテーマに伴奏となる対旋律がついていることがあげられます。

インヴェンション… 和声進行とカノンで作曲されている。
シンフォニア… 曲の第1部に、フーガ構成使われている。



☆特別な例として、インヴェンション2番は完全な対位法で作られています。
この曲は最初のフレーズが12小節と長く、集中力が必要な難曲です。






今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます!


さくら舞🌸

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