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奥伊勢の山林労務に付随する楽しみ⑴

川歩き
<監督補佐>
ログ倉庫建築には大がかりな機械は使わないので、全面的に人間の力仕事となる。柱にする杉を林の中から担いで建築現場まで運ぶのは重いし、檜はもっと重い。屋根を支える棒の上に乗ってカーボナイトの屋根を葺く時は安全ベルトを付けているとはいえ、危険を感じる。丸太を運んでいる際、現場監督が時々不用意に手を離すので、今までに足の爪が2本生え替わった。

更に言えば、現場まで時間がかかるので、ログ倉庫建築に行く際は、早朝に出かける。帰宅時間は、今は帰宅してから夕食をとるので、遅くとも9時には帰るようにしているが、現場でダッチオーブンで作った夕食を食べていた時は、現場監督や手伝いに来てくれた人を送り届けると12時を過ぎていたりした。等々、現場監督には事務所存続の為には必要な労働だと何度も言われているので止むを得ず大内山に出向いているものの、ほぼ、ほとんど、楽しくない。

そんな日々だけれど、ごくたま~~に、楽しい時もある。作業の楽しさは皆無だが、町では見られない生き生きとした自然に接して、山林労務の疲れを忘れる時がある。

現場監督が腰を傷めたりして力仕事を早めに切り上げる時は、あからさまに喜ぶわけにもゆかないけれど、内心、少し嬉しい。今では監督も無理の出来ない年齢になっているので、そんな時は早々に帰宅するのだが、まだ元気な頃は川に面した敷地を点検すると言う現場監督と川の中を歩いたりしていた。

勝手に「虎ドジョウ」と呼んでいた魚は
 正式には「シマドジョウ」の一種らしい。
 (大阪府立環境農林水産総合研究所の写真)

同じ川を歩いていても呉越同舟、興味の対象は全く異なる。
現場監督は川に沿った敷地を眺め、水流で少し抉れた敷地を見ると「あ、領土がまた減った」などと嘆いたり、川の上に伸びて互いに邪魔をしている樹木の枝を剪定したりしながら歩き、監督補佐は透き通った水の中の小魚やオタマジャクシがチョロチョロするのを眺め、「虎ドジョウ」と勝手に呼んでいた黒と黄色っぽい5㎝くらいのヒゲを生やしたドジョウのような魚を見付けて喜んだり、という具合で、川歩きは監督補佐もマイペースで楽しむことが出来る数少ないイベントなのである。監督は少々不本意だろうけれど、監督補佐には珍しく楽しいひとときとなる。






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