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コンクリートブロックの動かし方

<現場監督>

20キロとか30キロとか、たまに60キロのコンクリートブロックを動かすのは大変である。縦に転がすか、立てたままタヒチのモアイの移動作業のように左右に揺さぶりながら前進するか、そのどちらかである。監督補佐はモアイ移動方式を選び、私は縦にドッタンバッタンと転がす方式を選ぶ。

その作業の時は相当気合を入れてかかることになる。何せ60キロのコンクリートブロックを動かす時は、上げる時にも身構えが大事である。重量上げの三宅選手なみに腰を張り、エイヤーとまず直立させ、一息切れてから進行方向に突き倒す。それを何度も繰り返して目的の場所に運んだ後は、鉄棒とテコの原理で位置を調整する。

コンクリート製造会社の人は、車に取り付けてあるクレーンを自在に扱って鼻唄まじりで指定の場所にきちんと並べて、さっさと帰って行くのだが、建築作業についてのにわか労働者はそうは行かない。60キロのコンクリートブロックを扱う日は3個が限度で、その後は敷地内の雑木の剪定作業とかを楽しんで、その日の労働は終了ということにする。

この作業を経験してからは国道などで筋骨隆々のオジサン達がこの60キロのコンクリートブロックを動かしている姿をみた時には、いつも車内で「御苦労様です」と呟くようになった。何でもやってみないとその苦労はわからないものだ。

<監督補佐>

コンクリートブロックを動かす時、監督は一度直立させてドシンと倒す、という方法で前進する。直立させるのに相当の力が要る為、ゴソゴソ左右に動かす方法にすれば、と進言しても、「いや、この方が早い」と聞く耳を持たない。

確かに監督の方法だと、一連の動作でブロックの縦の長さは進む。ゴソゴソだと精々で10㎝くらいしか進まない。功を焦る監督。しかし目的の場所に到着して監督の方を見ると、監督は何度もブロックを直立させるのに疲れ果て、ゼイゼイ、ハーハーと道半ばで休憩していたのである。急がば回れ。



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