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第3章 初期の山林労務

枝打ちに挑戦する監督補佐

<監督補佐>

土地購入後、暇を見付けてはふらりと現地に出かけて、杉・檜の枝打ちをしたり、歩くのに邪魔な雑木を切ったりしていた。そのうち、地元の人が時々訪ねて来てくれるようになり、枝打ちの正しい仕方を教えてくれた。「幹の近くギリギリまで枝を切ると木が弱る」「道の方に伸びている枝は風除けのためにも残しておいた方がいい」という教えを頭に木に登る。

二段に伸ばしたハシゴの先から更に枝を伝って、出来るだけ上に登り、安全ベルトを上の枝にかけて、枝打ち開始。ノコギリで枝を切っていると、木屑が目に入って来る。ワークマンで買った防塵メガネは汗でくもるし、思いがけない角度から飛び込む木屑を防ぎ切れないので固めのチュールで工夫して作った頭巾をかぶっての作業。木に登る時は肩から、枝を切るノコギリと木屑よけの頭巾を入れた手作りのデニムの細長い袋を掛けて登る。

<現場監督>

枝打ちで肝腎なことは切り落とす枝の切断部分の下側3分の1くらいを切り込む作業と、その切り込み口から少し幹の方向にずらした上側からの切り落とす作業の微妙な関係である。これがうまくゆくと枝は自重によりバサッと落ちてくれるのだが、この間隔がうまくないと、枝の切り口が幹の方に走って枝の中心部で裂けてしまったりする。何せ枝そのものの重量がとてもすごいので、そのことを常に頭に入れて、切り口にどのような力が加算されていくのかを観察しながら慎重に作業することになる。うまく切り落とした切り口は後始末が楽であるが、そうでない場合は色々と治療をほどこす。樹の枝は1つ1つが手のようなものであるから、その切断は大手術をするようなものである。手術は素早く綺麗に実行しなければ樹にとって無用の痛みが将来に長引く。植物も動物と同じなのだ。

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