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間伐を始める

<現場監督>

枝打ちは、元の山林地主がほぼ済ませていたので、その後は間伐が主たる山林労務になる。そういう状態で我々の仕事は始まったのだが、当初はノコギリで切っていた。楔を入れるのに2カ所を切り、バームクーヘンの切り落としのような三角片の楔を取り出し、次に反対側からゆっくりと切り始めるのだが、楔が大き過ぎると風で樹木が揺れて、切り口がノコギリをしっかりはさんでしまう。

こうなるとノコギリはとビクともしない。抜き差しならない、とはこのことかと監督補佐にロープを引っ張ってもらい、樹木の傾きを元に戻して作業を再開する。体を動かすことが楽しくて仕方のない頃であったので、ノコギリ作業も苦にならなかった。

吉野地方には杉を密植したまま、間伐せずに成長させ、年輪を狭くして赤身部分の成長をゆっくり待つという伝統がある。これがいわゆる「吉野杉」である。強くて長持ちするので最近でば「吉野杉で建てる家」としてその特質を前面に売り出すハウスメーカーも出て来ている(「憧れの吉野材で建てる家2021関西版」吉野の木を使った家づくり推進委員会発行)。一度ここを見学してみようと考えている。いずれは吉野杉で家を建てたい。

ところで伊勢の国では間伐をして木を早く大きく育てる方針が取られている。村人の何人かは我々の作業場に来ては「あのあたりを早く間伐せい。あのあたりは真っ暗や!」などと口々にアドバイスしてくれる。中には木と木の間隔を5mくらいにすると値打ちが出て来ると主張する人もいる。田舎はとにかく指導者が多い。「ボチボチやりますわ。」


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