オルタナティブ・ポーラスター 落選展4・碑文の裏
地球滅亡の日。どう過ごしますか?
ウオオオオオ! 巨大隕石で地球滅亡!!
ありきたりすぎて人類が永遠のねむりにつきそうだ(退屈だから。)。
実際はねむっているヒマなどない。この世に思い残すことはないか?
それがあったらうかうか死んでられないぞ。
あるものはゲーセンに行き連コインをした。ESCAPE TO THE SKY★彡じゃねえか! 負けても負けても闘いつづけた。こいつ、さてはヒマな人生を送ってきたな? だが彼は他人の作った世界で戦いつづける。その姿が多くのひとびとの胸を打った。ウホウホウホ! そのドラミングが世界に伝播していく。同時多発的にひとのこころがイグニション(ぼっと燃えた。)。
ウオオオオオ! ヤツにつづけ!!
というわけでオルタナティブ・紀貫之として男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり!
「ネカマじゃねーか!」
文學少女がキレた! 眼鏡がよく似合う三つ編みの少女だ。だが彼女の得意分野は極めて特異に偏っていた。そこからただようそこはかとない腐臭! あとはご想像にお任せします。
「チッ、うっせーな! いいからおまえは地球滅亡を司る最後の読者をやってくれ」
「マジでいってんのか。地球最後の日だぞ。隕石だぞ。たぶんすべてが終わるんだ。なにを書いても無駄オブ無駄! 人類の歴史は終わり、銀河の歴史がまた一ページ」
「それだけでおまえは読者として適切であるということを示した。待ってろ。すぐに仕上げる。地球が滅亡するまでの残り時間は?」
「あと五時間くらいじゃないか? たぶんだが……テレビをつけてみよう」
どうもニュースキャスターです。世界滅亡まであと五時間くらいです。正確な時間はモニターをごらんください。見えねえな。あ? もう世界が終わるってんだ。だからよ、ずっとやりたかったVの者をやる! テレビなんて全部嘘なんだ! 報道に真実などない! ただ喋るだけの機械で終わるつもりなぞないのだ! 俺はいま短歌詠みロイドに転生した! ヴァーチャル短歌人造人間パープル・ナゴンだ!
「テレビなんてつけたら頭が悪くなるな」
「同感だ」
ドコドコドコドコドコドコドコ!
時間がないから超高速で打鍵! 五時間で完結した掌編を書くなど狂気の沙汰ではないか? いや、若い頃のおれならいけたはずだ! そしておれは実際若い! このブンゲイを見よ!
「できた? オレもうキルヒアイスが何回死んだか数えられないよ」
「おまえもなかなかヒマだな」
「じゃなきゃ、おまえの読者なんてしてねえよ」
「ありがとう」
さあ、判定は!? 文學少女の速読術が光る! その読解力でこれまでいくつもの花を咲かせてきた。世界最後の読者におれは大変感動している。
ドコドコドコドコドコドコドコ!
ドラムロールの擬音には見えない。
ジャン!
「駄作!」
ガガーン! ズドドーン!
隕石が地球に直撃。こうして地球人類とその文化はことごとく滅亡した。衝撃が大きすぎて地球の回転軸その他もろもろがヤバいことになったが、地球を守護る神の力により生命居住可能領域から外れることは免れた。
それにしてもひどい最期だったね。特に創作のくだり。
神様はあわれに思い、滅びた地球文明を星空に投げていった。
元・北極星の周りには文芸座ができた。それは傑作星、佳作星、凡作星、駄作星、どうでもいい星で構成された文學少女の星座だった。
それから長い長い年月がすぎていった。
暦を数えるものなどどこにもいない。
神様もだんだん飽きてきて水星で魔女しよってテンションになってきた。
そんなことだから、地球に新しい生命が生まれ始めてしまった。
星はあやまちを繰り返す。なぜまた同じ生態系が形作られてしまうのか。それは地球という環境の持つ宿命なのだろうか。地球「ノーコメントです」
そしてふたたび人類が現れてはじまりの文学が作られる。彼らは北へ向かった。北へ行こう、ランララン。
その目印が星である。あの北のはてに輝くオルタナティブ・ポーラスター。文學少女の星座のなかに、ひときわ強く輝く一点の星がある。文芸の星だ。ひとびとはそれに向かって歩きつづけた。
その星がかつてなんと呼ばれたものだったのか。いまではもう、誰もそのことを知らない。
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