BFC4落選展感想 56 - 60

はじめに

 ここからテンプレ。
「#BFC4落選展」のタグがつけられた作品にのみ感想をつけていきます。それ以外の作品はどのような存在であれ無視します。読まれたいと願うブンゲイファイターの心にのみ正対していきたいからです。
 本稿はその性質上、ふんだんにネタバレを含みます。ですので、まずは落選展作品の内容をよく読んでから目を通していただけるとうれしいです。それが作者の方々のためにもなると思いますので。




ねぎしそ「街灯と街」

 作者が作品に恥をかかせてしまうんだよ。ブンゲイしようとしてブンゲイしてる表現がやたら目につくこととか、太字にする処理がちゃんと働いていないという不徹底とか。そういう態度が作品の持つ魅力を殺いでしまう。
 テクストを解釈しようというときには大変よくない姿勢だが、目に入った情報に引きずられるのが人間というものだ。
 なにしたい小説なんだろう、と思ったら着地点が性愛的恋愛小説になっていて、そこに感心した。単語の選び方とかはやっぱり気になってしまうが、作中で展開され学んだ内容をそのまま主人公自身に当てはめていくラストシーンは見事な文芸だ。こういう尖ったUX形成をするときほど、慎重に対応してやらないと色んなものが台無しになる。
 私の言えた義理じゃないからこの辺にしておこう。

乙野二郎「チャンドラーの九命題他とわたしの十戒」

 チャンドラーのいってることはごもっともだなという気がするよ。最近、衝動的に小説を書いてろくなものになってない自分に対して警告を発したいくらいだ。こいつの実践は難しからな。そこが文芸の芸術たるゆえんだという気がした。(ただのチラ裏)
 各作家の流儀紹介が終わったらオモシロ十戒が始まってしまった。ふたつくらい読むと、もうそこから先はおふざけワールドが展開されるのが目に見え、その約束事をちゃんと守って終わる。わかりやすくてよい。
 ただ、この路線は超真面目に取り組むかおふざけするかという二択になってしまうので、奇想的な部分は求めづらいな。考え方の参考として心に留めておくだけにしよう。

うぶたか「往復書簡」

 一ページ目でやぎさん郵便の話だってわかるのがすげーよな。ストーリーはそれを大仰に書いただけでは終わらず、どこかやばいところから手紙を送ってますよ、というのがだんだんと伝わるようになっている。
 この話、脚本形式だということにあとで気づいた。だから頭の中に浮かべる景色は演劇の状態が正しかったんだな。ト書き的な描写にぜんぜん気づかなかったあたり、脚本書いてた頃の自分の感覚をまるっきり失ってる感が半端ではないな。明点は明転のことか。
 小説的に読むと「いや送り主無事じゃん」ってなるけど演劇にすると「うわー」となるから不思議だよな。こういうのは体験としてもおもしろい。私が勝手に楽しんでるだけかもしれないけど、よかったよ。

宗方 涼「今後の社会の在り方に関する検討会 第一回議事録より局長挨拶抜粋」

 最速のnot for me。私の好みにまったく合っていない。
 政治的な話と現代の問題を真っ向からお出しされるとはな。一応未来予測という形で書いてはいるからSFに分類されるのだろうが、わざとらしいし直線的すぎる。
 通読するのはたいして苦ではなかったが、文芸としておもしろいかといわれるとno。こういうお話を小説的に書いてお見せするというのが通例だから、この直線的な演説は逆にひねって見えるかもしれない。話のオチも現代の状況を考えると真剣実がある。しかし環境を見て環境に合わせて物を書いただけ、というふうに見えるところがある。いつにもまして冷たい書き方になってるな。カットアウト。

阿下潮「最愛の人」

 読み方によってどうとでも取れる構造を自然に作っているものと、読み方によってどちらかを選択しなければならないということを強制されるものとの間には大きな開きがある。というのが、この作品の持つ根本的な問題点だろうな。読み方を強制されるのは窮屈感がある。
 でも開幕最愛の相手がアニメキャラだったの草。なんで二期の登場人物のくせにデーメーテールの祝福を受けてんだよ!!! とかいうめちゃどうでもいいツッコミをさせられた。まあデメテルはオリンポスの中でも一番怖いオカンだから、アニメ設定がどうこうではなくて「最愛の人としての母親」と対比させるのに必要な道具立てだったということだろう。そう考えると設定的にもしっかり作ってあって草を超えて芝。
 なんかこの話、結末部をアニメボイスで流すと世にも奇妙なショートショートみたいね。逆に母親の声だったら安心する。まあ主人公の状況があんまり前向きな感じじゃないっぽいから、現実の方を選んでほしいっていう好き勝手な願いを持った。そして、その択を迫られるのが読者として嫌なのだ。


 本稿は以上です。
 お読みいただきましてありがとうございました。

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