BFC4落選展感想 46 - 50
はじめに
ここからテンプレ。
「#BFC4落選展」のタグがつけられた作品にのみ感想をつけていきます。それ以外の作品はどのような存在であれ無視します。読まれたいと願うブンゲイファイターの心にのみ正対していきたいからです。
本稿はその性質上、ふんだんにネタバレを含みます。ですので、まずは落選展作品の内容をよく読んでから目を通していただけるとうれしいです。それが作者の方々のためにもなると思いますので。
犬飼「星梨」
宮沢賢治の童話風に書いてみました。#BFC4 #BFC4落選展https://t.co/fnozAej4Kz
— 犬飼 (@skmt3104n) October 28, 2022
途中までただのほんわか不思議雰囲気を味わってくだされ掌編かと思ったら突然SFになって草。思わず曲をかけたよね。そこがおもしれー作品だった。
ちょっとこれね、これ以外の感想出てこないのよ。ほんわか部分が全部音楽聞かせるための伏線っぽくてさ。だから音楽かけさせたら成功でそれ以外は全部おまけやろって気がする。うん。
すみません、めっちゃ短いけど現場からは以上です。
惑星ソラリスのラストの、びしょびしょの実家でびしょびしょの父親と抱き合うびしょびしょの主人公「Boid」
お焚き上げ #BFC4落選展 https://t.co/znVRj0AQVV
— 惑星ソラリスのラストの、びしょびしょの実家でびしょびしょの父親と抱き合うびしょびしょの主人公 (@c0de4) October 28, 2022
なるほどな。リアルタイムでその場にある音を文章として書きながらストーリーを進めていって、後半の語りで一気にホラー的な方向に収束させて物語を納得させるというわけだ。この作品は単語の置き方や状況を伝えようとする部分が上手だから似たような文体の他の作品と比較するとわかりやすくて助かる。文芸として巧みだな。なんかでこういう書き方を試してみてもいいかもしれん。勉強になる。
他方で、この作品はどうしてもSCP-Talesだなー、という印象をぬぐえない。よくできているからこんな感想でおもしろさが消えるとは思わんけど、なにせ鳥だからな。鳥っていわれちゃうと頭の中に出てくるのがやつの影。
SCPっていうものはもはやジャンルだ。存在だけで脅威となる。
双子のライオン堂書店「小説「だった」」
小説「だった」#BFC4落選展
— 双子のライオン堂(赤坂六本木本屋) (@lionbookstore) October 28, 2022
@lionbookstore #note https://t.co/egprusyObS
不思議と読ませてくる作品だった。ほとんどの文章が「-a。」という音で作られているが無理がある場所はさすがに妥協していた。だから本が売れるか売れないかについて書いてある文章が強く印象に残る設計となっていた。確かにいまの時代は自分からアプローチしていくより先に提案の方が飛んでくるな。だから売る側が自分から歩いていくというのは納得だった。最後も不思議な余韻を残していると思った。この物語はビジネスとそれによるストレスでなにかをやらかしてしまったひとについて書いてあった。その壊れ具合が最後の端的な事実と主人公の安心という心で表現されているのだ。だから構造としてよくできた作品だった。なにかの参考になるかもしれないな。客観的な評価は難しいが、読んでいるときの感覚そのものがいいという作品も世の中にはある。このUXを作れるのがうらやましかった。ま、そのうち届いてみせるというくらいでこの場は終わりだ。
寒竹泉美「幸福な夢」
ファイターの作品が公開される前に、落選作を公開しておこう。試合開幕前の前座として読んで頂ければ幸せです。#BFC4落選展
— かんちくいずみ (@kanchiku) October 28, 2022
幸福な夢 | 寒竹泉美 #pixiv https://t.co/lTKIGc9inZ pic.twitter.com/2Kqg7W51jH
こんなこと読者がいうことかよって感じだけど「こういう状態に陥ったらこういう問題が起きるよな」ということを書くのが巧い作者さんだ。そして読了した瞬間に「ま、またこのパターンになったぁ!?」と思ってしまう。これはこの作者さんが文芸をする時のスタート地点が「人間の心の有様」にあり「それに対する万能の答えを出すことはできない」というある種の信念に基づいて構築されているからでは、という気がした。妄想です。
安定して精緻な筆致。リアリティ。問いかけ。どれをとっても上品だし、瑕疵があるわけでもない。ただ、この作品は「答え」を教えてくれることは決してない。読者に淡々と問いかける。こういうところが揺るがん力というものだし、もしかすると現時点における作家性なのかもしれない。
文芸をやる者として見習いたい姿勢であると同時に、そこがいま最大の障壁となっているのかもしれないな、とも思う。人類が永遠の眠りについた頃からずっと、そうしたことが付き纏って頭から離れない。
プリコグたん「永遠の微睡」
永遠の微睡|プリコグたん @precog_tan #note https://t.co/rv4VvSnICV #BFC4落選展
— プリコグたん (@precog_tan) October 28, 2022
私は時に運命を感じる。いや、さっき書いた文章はこの作品読む前に書いてるからね?
この作品は不思議世界観小説→SF小説→投げっぱなしジャーマンという形で話が転がっていき、読み終わった瞬間に「そりゃそうだけどさーっ」と盛大にずっこける羽目になった。
どうも世界が永遠の微睡に落ちたらしく、その原因は多分この作中に出てくる単語に関係している。だが、そういったことを展開する前に小説が終わってしまう。なんでだよ! これからだろうが!
思わずめっちゃ突っ込んでしまった。確かにこの作品はこっちの予想をズバッと裏切ってくれるが、そうじゃないでしょう!
でも正直なところ草。草どころか芝だったかも。感想書いてる途中でむせたわ。絶対選考には通さんけど、いいよ。こういうの読まないと気が詰まって死ぬから。
奇しくもこの作品が落選展50作目となりましたが、いまけっこう爽やかな気持ちになっています。そりゃねーだろーがよーっ! って感情を素直に爆発させてくれたので。この作品読んだときのスカッとした気分をどうにかして伝えたい。こういうことがあるから落選展を読み続けるという行為がやめられない。みんなも一作ずつがっつり読んでみるといいよ。時々ドカンと感情が爆発する瞬間があって、それはなにがきっかけになるかわからないから。
本稿は以上です。
お読みいただきましてありがとうございました。
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