BFC5落選展劣悪感想紀行 新規編 24
概要
その辺の一般通行人が劣悪な感想を書くシリーズです。
国語に興味のない学生が、他人に強制されて仕方なく書く読書感想文みたいなものだと思ってください。
本稿では初読におけるユーザーエクスペリエンスを読書体験として定義し、そのときに得た先入観に基づいて感想を書きます。感想を書く過程で感情を想起するために再読するケースがあり、完全なる初読の感想を書くことは残念ながら困難です。ですが、できるだけ最初に感じたことを忘れないように感想を書こうと思います。
また、私は感じたことをできるだけ包み隠さずに伝えたいと思っています。その性質上、その作品に対して否定的見解を示すことがありえます。
すべての作品に対して平等に接することはできません。
そうした自分自身の限界や、悪意、愚劣さの披歴を含めて、作品に対する感想を書ければと思います。
24.「面影は消えない」蒼桐大紀
開幕からまったくフラットではない感想になってしまうが許して欲しい。
なんで私がイグBFC4で書いた作品と対照的な内容なのだろうか? 似たようなことを似たような時期に考えているということに妙なシンパシーと危機感を覚えた。もっとも、私はアホな方向に突っ走った結果あんなものを書いたのであって、この作品のように真っ向勝負の場に出て行こうとはしていない。だから方向性が真逆であることはむしろ喜ばしいことのはずだ。
この作品は創作という行為を通じてふたりの人物が交流する物語。成功者の視点から物語は書かれ、その成功のきっかけを与えてくれた人物に対する想いが同時に綴られている。ラストシーンも印象的。春水の読みがチュンスイだったということもここで明かされるので、二周目を読むときにはちょっとだけ印象が変わるという細工も施されている。(意図的ではないかもしれないけど)
最後の一文が美しく機能していて、なんかいいもの読んだなあという気分にさせてくれるので、この作品に対してはかなり肯定的な見解を持っている。
読んでいて話がすんなり頭の中に入ってくるだけでもありがたいことだが、意図が読み取れているはずだと私に錯覚させてくれるところも特筆すべきところ。妙な挙動をする文章がないので(過去の落選展の作品などと比較しても)リーダビリティが突出して優れている。他がリーダビリティを犠牲にして他のパラメータに振ってる説もあるが、ストレートな題材でストレートな物語を描いているという点は、同じような領域で創作している身としてはどっかいって欲しいレベルに到達している。(比較対象は落選展No.12であり、奇しくも練乳百合マイスターの作品。なんで百合マイスターどもはこんなのばっかりなんだよ)
と、ここまでいい点にばかり触れてきたので、上げた分を落としておこうと思う。
あえて難癖をつけるのであれば、一人称小説としての完成度を高めることを優先するためだろうと推測してはいるが、主人公の思想信条によって単語の持つ性質が左右されている点がひっかかる。たとえば、上手下手は客観的な価値判断基準であるが、良い悪いは主観的な判断基準である、というような(これ一か所では?)。特に論理的な説明がないので、いまでも引っかかったままになっている。どちらの表現も文脈で左右される気がするけどな。
リーダビリティが高いと言ったのと反するのだが、カタカナで会話する春水の台詞については決して読みやすくはない。片仮名+漢字で会話しているのでロと口の区別がつきづらくて引っかかるというくだらない思いをした。非ネイティブ話者の表現として非常にありふれているものではあるので慣れろという話であるが、ルビ欲しかったよね。
大切なこと、自分を変えたきっかけ、を語る日常系の物語として読むことができ、そうしたジャンルの作品として、この短さの小説としてはとてもよいものを読んだという印象を受けた。
その一方で作品としての印象を強くしているのは片仮名+漢字で話す春水の存在が大きく、語り手である主人公については(能力的には非凡であるものの)平凡な印象を受けた。メカクレ系女子なのでしょうがないかなとは思ったけれど、ちょいともったいないですね。もっとも、主人公が春水への想いを綴る一人称小説なので主人公があんまりでしゃばるのも変な話。主人公→春水の感情が強く書かれていればそれでいいんじゃないかなという見方もできる。逆の感情も一応強いことが会話から読み取れる。だから主人公ももっとかわいくしろよ、みたいな個人の感想を突っ込むのはかなり野暮だな。
とにかく、百合はいい。私にはそれが必要なんだ。
総じて良い物を読ませてもらったし、さすが百合マイスターだと思った次第。SF百合マイスターとだけ呼ぶのはもはや失礼だから、これからは日常百合マイスターの呼称も混ぜていこうと思う。これで両方を融合したSF日常百合まで書けるようになってたらもうこの人とバトルするの無理です。
追伸
私は眼鏡っ娘が登場する眼鏡百合が最高に好きなので次書く時は必ず眼鏡っ娘を出すようにしてください。それだけで☆の数が変わります。
なんかえこひいきしてる感じの感想になったな。
でもまあ仕方ないよ。感想書いていいって許可くれたんだもの。礼を尽くして書きますよ、そりゃ。
そして、全員にこの量の感想書くのは無理だぜ。いくらヒマでもさすがに時間が足りないわ。だからこのシリーズは竜頭蛇尾で終わる。悪しからず。
以上です。
お読みいただきましてありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?