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72-22候 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

 夏 小満 72-22候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)
 
 なんともコンテンポラリーで美しいトップ画像は『蔟 (まぶし)』と言い、蚕が繭を作りやすくするための藁で編んで作った部屋。言わば、蚕のマンションのようなもの。熟蚕が自分の部屋を見つけるためにのこのこと上り、一枡に一頭づつ入るらしい。
 蚕が繭を作る時期になると体があめ色になり、この蔟 (まぶし)に移動することを上蔟(じょうぞく)というのだそう。

 驚いたのは、カイコは家畜化された昆虫で、野生には生息しないのだそうで、野生回帰能力を完全に失った家畜化動物。ヒトによる管理なしでは生育することができないとのこと。
 従って、自分で、餌の桑の葉を探しに行くなんてことは絶対になく、ヒトから桑の葉をもらうまで、ただひたすら待っている。
 家畜なので一匹、二匹ではなく、一頭、二頭と数えるのも興味深い。

 成虫はヒトが近付いても逃げようともせず、逆にヒトの方に自ら近付いてくるという。繭を作る際も『蔟 (まぶし)』のような人工的枠に入れてやらないとうまく繭を作れず、一見、グロテスクなその形もこうして聞けば、なんとも可愛く感じるのも不思議だ。
 
 繭は一本の糸からできていて、繭を丸ごと茹で、ほぐれてきた糸をより合わせ絹糸を手繰るらしい。1個の繭から約800~1,200m採れるというが、おそらく大変な作業だったろう。

 絹糸を取った後の蛹は熱で死んでいるが、鯉のえさや鶏・豚のえさとして利用されたり、さなぎ粉と呼ばれる魚の釣り餌が、実は、それだったり。
 人間さまも貴重なタンパク源として食用する例もあったそうで、長野県や群馬県の一部では佃煮(どきょ)にして食用にしていたという。

繭玉

 で、上の山盛りの白いのは私のコレクションの<まゆ玉>。これにはカイコは入っていない。下の五個の色付き繭は、『群馬昆虫の森』敷地内の古民家でいただいた。
 手でつまんで揺するとコロコロ音がする。サナギのミイラが入っているハズ。

桑畑 2009年10月 群馬昆虫の森にて

 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)
 大きな桑の葉を蚕の上からかけてそれを食す図が欲しかったけれど、この時は秋10月に出かけたので、すでに時期は終わっており残念な思いをしたのだったが、『蔟 (まぶし)』の美しさや、家畜のお蚕さまから受けたカルチャーショックは、到底、忘れ得ぬものとなった(2009年10月「群馬昆虫の森にて)。

2024年5月20日(月)【旧暦 卯月13日】


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